それまで全く知らなかったのだが・・
全国の小学校を回る旅劇団と言うものは
思っている以上に都内に多く存在し・・・
僕がこの日オーディションで向かった旅劇団は、
その中でも”結構大きめの規模”の劇団だった。
カサハラ
「(この劇団に合格することができたら、きっと僕の求めている”表現演技”についても沢山学ぶことができるはず・・・しっかりと準備して臨もう)」
と、オーディションの数日前から張り切っていた。
のだが・・・
オーディション前日。
事務所から送られてきたオーディションの
審査内容についてのメールを見て、僕は愕然とした。
カサハラ
「だ、ダンス審査だと・・!?」
その瞬間、嫌な記憶が
僕の頭の中をよぎり出した。
あれは、中学・・
いや、高校だっただろうか・・
いやいや、小学校時代だったかもしれない。
もはや、自分の中でも
“消し去りたい過去”なのだろう。
”創作ダンス”を披露する授業が
僕の人生のどこかのタイミングで開催されたのだ。
何かを作ることが大好きな僕は
”創作ダンス”という言葉に心をときめかせ・・
ダンス初心者メンバーでチームを組み
一生懸命ダンスを考えて、一生懸命ダンス練習に明け暮れた。
そして、出来上がった”創作ダンス”は
体育の授業で、発表会が行われ・・・
僕らは気持ちよく音楽にノって
”創作ダンス”披露した。
カサハラ
「(ダンスって、こんなに楽しいものなのか・・!!)」
僕は、ダンスの魅力に
どっぷりとハマりつつあった。
そして、その数日後。
発表会の当日に
担任の先生がビデオカメラで撮影したものを
みんなで観ようという会が開かれた。
カサハラ
「(僕らのダンスの出来は、どんな感じだったんだろう・・??)」
自分たちのダンスを
客観的に見るのはこの瞬間が初めて。
僕は、ドキドキワクワクする気持ちを抑えながら・・・
僕らのチームの”創作ダンス”を食い入るように見た。
すると・・
カサハラ
「(く、く、く、クソだせえ・・・!!!)」
それは、ド素人が
ワチャワチャグネグネと体を
動かしているだけのモノであり・・・
僕が想像していたような”ダンス”とは
遥かにかけ離れたのもであった。
それを見た周りの同級生からの
冷ややかな笑い声も漏れてくる。
カサハラ
「(も、もうダンスなんて一生するもんか!!)」
という羞恥を経験して以来・・・
”ダンスなんてこの世に存在しない”
くらいの感じで生きてきた。
のに・・だ。
カサハラ
「だ、ダンス審査だと・・!?」