カサハラ
「(干拓音頭なら、今でも体で覚えている・・・踊るなら、これしかない・・!!)」
決して、ふざけた決断ではなかった。
ダンス未経験、いやむしろダンスに対して
“トラウマ”になるほどの経験をしていた僕にとっては・・
この”干拓音頭”を
自信を持って踊れることだけが唯一の光。
そして・・
この干拓音頭を”歌える”ということも
大きなメリットとなった。
“歌唱・ダンス審査”があるということは
きっと劇団に入団した後も”歌って踊る”ことを求められるはずだ。
だったら、ここで
干拓音頭を”歌って踊る”ことが出来れば
合格の可能性は一段とアップするに違いないのだ。
審査員
「み、民謡ですか・・では、披露のほど宜しくお願いします」
カサハラ
「はい。では行きます・・・」
僕は、呼吸を整えた。
そして・・
カサハラ
「掘ってぇ~掘ってぇ~また掘ってぇ~!」
審査員
「え?」
カサハラ
「あ、お山に松!お山に松!」
審査員
「お、おや・・」
カサハラ
「な~み、チョン!な~み、チョン!」
審査員
「チョン・・?」
カサハラ
「下がって、下がって、や~まかいて、パパンがパン!」
審査員
「パパンがパン・・・」
カサハラ
「はい!!掘ってぇ~掘ってぇ~また掘ってぇ~」
審査員
「え?もう繰り返し!?」
カサハラ
「あ、お山に松、お山に松・・・」
・
・
・
その後、
僕は、舞台のオーディション時に
当時の演出家(現社長)の
『自分で演技を止めてしまってはいけない。辞めてしまうということは、審査を放棄してしまったことと同じ』
という言葉を思い出し・・
審査員からストップの合図がでるまで
スタジオ内をぐるぐると”干拓音頭”を歌い踊り続けた。