そして、数10秒後
審査員
「・・はい、カサハラさん、そこまでで大丈夫です」
思いのほか早く、
審査員からストップの合図が入った。
僕は、舞を止め
自分のパイプ椅子の前にサササと戻った。
カサハラ
「ありがとうございました」
審査員
「あのう、1ついいですか?」
カサハラ
「はい、何でしょう?」
審査員
「今カサハラさんが歌った地元の民謡って、本当にそんな歌詞なんですか?」
カサハラ
「え?・・・はい、それは・・あ!!」
僕は、驚愕の失態に気が付いた
カサハラ
「こ、これは・・歌詞ではないかもしれません・・!!」
そう、今僕が披露したのは・・・
踊りの振りを覚えやすいように、
小学校時代に先生から教えられた、
ただの”覚え歌”だったのだ・・・!!
踊りを覚えるときに一緒に頭に叩き込んでいたので
あたかも干拓音頭の”歌詞”と思い込んでしまっていたのだ。
審査員
「ですよね、カサハラさんの”動きにリンクした”内容の歌ではありましたが、全く歴史や背景が見えなかったもので」
カサハラ
「そ、そうですよね・・・」
審査員
「それでは、“歌唱”とは、なりませんね」
カサハラ
「あ・・・はい・・・」
こ、これは完全なる失態だ。
審査員
「はい、ありがとうございました。本日の審査は以上になります」
3人
「ありがとうございました」