僕は、わけが分からないまま
スタジオの中央に歩みを進めた。
演出家
「では、これが本当に最後の審査になります。」
もう、何が何だかわからない。
なぜ僕がここまで残っているのか。
演出家
「最後の審査は10人一斉にスタートです。
みなさんは今、自宅の部屋でホラー映画を見ています。よーい、はい。」
気持ちの整理がつかぬことなど
一切無視するかのように
最後の審査は
瞬く間にスタートした。
僕は、指示されるがまま
ホラー映画を見ている演技に移ろうとした。
しかし・・
「こんな状態で演技なんて無理だ・・」
冷静になんてなれるはずがなかった。
訳が分からない。
何故、自分がここまで残っているのだ?
他にも優れた人はたくさんいたはずだ。
「柔軟体操」で高評価を得た人。
「調べてきたこと」の発表で高評価を得た人
即興の「演技審査」で高評価を得た人。
そんな人たちを差し置いて
“何もできなかった”僕が
何故“最後の審査”に残っているのだ・・?
怖い・・・
どうして・・?
どうして・・・?
その疑問だけが、
頭の中を巡り続ける。
演技になんて・・
一切集中できなかった。