演出家
「はい。じゃあこの3人に決定ね。」
その3人はスタジオの中央に集められた。
目の前には審査員席。
そして周りを囲むように
20人以上の参加者の視線を浴びながら・・・
3人は(1人は例外)、
これから審査されるのだ。
さぁ、いったい
どんな審査が行われるのだろうか・・
挙手をしなかった僕でさえも
スタジオを包み込む独特の緊張感で
身体がビクビク震えてくる。
そして、
演出家が口を開く。
演出家
「君たちは普段、どのくらいの時間お風呂に入るの?」
え?
それは、唐突な質問だった。
挙手をした2人は「え?」と
あっけにとられた表情をしている。
いや、2人だけではない、
周りの参加者も「?」状態だ。
「そんな質問をして、何の意味があるというのだ?・・」
すると男性は、
「だいたい10分くらいです」
女性は
「30分くらいだと思います」
と答えた。
演出家
「なるほどね。じゃあお前は?」
と、ストレッチレディにも問いかけると
ストレッチレディ
「私は2時間です」
長っ!?
そりゃ、身体も柔らかくなる訳か・・
なんなんだ・・?
こんなことを聞いて、
何か審査の基準になるのか・・!?
僕は「?」状態のまま
その様子をじっと見つめていると・・
演出家
「はい、なるほどね。じゃあ、僕が手を叩いたら、
3人は自分の家のお風呂に入ってください。よーい、パン!」
突然の指示と、
審査開始の合図だった。
状況をつかめず、
百戦錬磨の2人はポカンとしている。
当然、他の参加者もポカン状態だ。
「何!?このやり方・・怖い・・怖すぎる・・!」
2人はどうしようかとあたふたしていると、
横のストレッチレディは・・
すでに「お風呂の入る」準備の演技を始めていた。
その様子は至極自然で、
ストレッチレディはまるで本当に自宅の脱衣所にいるかの如く・・
普段の「お風呂に入る」様子を再現していた。
「す、すげぇ・・ストレッチレディ、やはり只者ではない・・」
幾度となく見せつけてくる
ストレッチレディのポテンシャルに、
僕は、
感動と底知れぬ恐怖を抱いてしまった。