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ストレッチレディで「ありがとうございます。」




ふう・・



会場全体を包み込んでいた
ピンと張りつめた緊張感からの解放だった。


全身の力が抜けて、
僕はスタジオの片隅に座り込んだ。



「結局この2日間は、何も残せなかったな・・“記憶力ゲーム”だけは自信があったけど、もしそれだけが出来たからって、”役者”として何の評価にも繋がらないし・・






初めから難しいことは、
分かっていたはずだった。



だけど・・


実際に直面した数々の大きな壁を前にして
自分の無力さを改めて感じたとき・・



果ての知れない悔しさというものが
心の奥底からどんどんと湧き上がってきた。




このまま終わってたまるか・・


結果ダメだったとしても、
絶対に、後悔だけはしたくない・・



強い思いをもって
最終日に臨んでやるんだ・・!




そう心に決めながら、
更衣室で上半身だけ着替えると・・・


スタジオの外に続く階段を
僕は上っていった。





その時だった。





スタジオの外で、

演出家とストレッチレディが
送迎タクシーを待っていた。




出口の扉の前で、僕は立ち止まった。


心臓がバクバク鳴り出しているのが分かる。


この瞬間を逃したら、きっともう終わってしまう。


ここで一歩踏み出すことで、きっと何かが変わるはず。


でも自分に何ができる?


何もできないのか?


いや・・・


きっと、何かできるはずだ・・!


これは最後の最後に、
神様が与えてくれたチャンスなんだ。



鼓動が高鳴る。


身体が震え始める。


そして・・・


意を決した。




「あのう!」



演出家
あ、君か。どうした?




「えーっと・・・」



演出家
何だい、もう行くよ?




「僕、まだ・・・





”駅名”を全部覚えています!




演出家
え?



演出家は一瞬だけ、
“驚いた表情”を見せた。


それは、2次審査から通じて
初めて演出家が見せた一瞬の緩みだった。




「えーっと・・恵比寿、池袋、新橋、荻窪、銀座、~~~」




僕は頭の中の路線図を広げて、電車を走らせた。


しっかりと道順を間違えないように。


今度こそ、道を逸れてしまわないように。


演出家
・・・・・




「~~~~。以上です。駅名、全部あってますよね?」



演出家
いや、もう覚えていないよ。




「あ、そっか・・すみません・・」



演出家
ふふふ、君、やっぱり面白いね




「い、いえ、そんな、ありがとうございます・・!」




その時、送迎タクシーが到着した。



演出家
君は何で、事務所に入っていないの?




「え?いや、その・・良い縁がなかったというか・・」



演出家
なるほどね。おい、彼の名前を聞いておいてくれ


ストレッチレディ
「ハイ」



そう、ストレッチレディに指示を出すと
演出家はタクシーに乗り込んでいった。



ストレッチレディ
「オナマエハナンデスカ?」




「カサハラケントです・・」



ストレッチレディ
「ありがとうございます。」




「・・え?」



するとストレッチレディは、
一瞬だけ僕の方に笑顔を見せて・・


演出家とともに
タクシーに乗って去っていった。


僕はそれを・・


その場に立ち尽くしながら、
ただただ見送っていた。



つづく・・・



P.S.

いやぁ、最終審査の2日目は本当に濃い一日でした。笑
すべてが思惑の逆を行くというか、実力も足りてない中、運すら付いてこないのかと、落胆しましたね・・汗
でも、帰り際に訪れた最後のチャンスでなんとか勇気をもって踏み出せたのは、大きなターニングポイントだったのかもしれないです・・!

あと、ちょっと前に「記憶術」の先生とお話しする機会があり、僕が記憶力ゲームで使った「頭の中に路線図を描く」という方法は、実はとても理にかなっている記憶術だと教えてもらいました。ただ、それがどう理にかなっているかは・・もう忘れてしまいました・・きっとその話は、頭の中に描きにくいものだったんでしょうね・・・笑



次回!!
ついに最終審査3日目に突入したカサハラ青年。1・2日目の審査では、思うようなアピールが出来なかったが、「もう最後だから悔いなくやってやる」と、開き直って挑戦する。そして最終日に待ち受けていたのは、まだ見ぬ”審査内容”と驚愕の事態だった・・・

お楽しみに~!!


カサハラケント

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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。

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