完全ヤンキー
「ヒノウエさ~ん!」
ヒノウエさんは
一瞬びくつきながら・・
演出家がスタジオの
外にいることを確認し・・
「ドウシマシタ・・?」
と、小声で返答してきた。
完全ヤンキー
「ヒノウエさんって、普段も、あの演出家のもとで芝居してるん?」
ヒノウエさん
「ソウデスネ・・・毎週、演出家から演技レッスンを受けて、演出家の主催する舞台には何度か出演させてイタダイテイマス」
カサハラ
「そうなんですね・・!」
完全ヤンキー
「休憩時間も長くないから、端的に質問してもええ?演出家が戻ってくる前に終わらせた方が、ヒノウエさんも安心やろ?」
ヒノウエさん
「ハ、ハイ・・・何デショウ?」
カサハラ
「ヒノウエさんの役作りのアプローチの仕方って・・一体どんな感じなんですか?」
ヒノウエさん
「役作り・・デスカ?」
完全ヤンキー
「せや、やっぱりヒノウエさんの演技は一緒に芝居してても目を引くものがあるし、どんな感じでアプローチしてるのか、めっちゃ気になってな~!」
ヒノウエさん
「ナ、ナルホド・・・ソウデスネ・・」
完全ヤンキー
「さっきも演出家からセリフ採用されてたし~!普通やったら、あんな流れをブチ切るようなセリフ、思いつかへんし、差し込む勇気もないで~!」
ヒノウエさん
「ウマく伝わるか分からないデスガ・・演技の最中は、“何も考えない”ようにシテイマス」
完全ヤンキー
「何も考えない?」
ヒノウエさん
「ハイ、役作りも、台本の流れを頭に入れるのも、自宅でシッカリ詰め込んで来て、稽古中は、ソレラを全部とっぱらって、“何も考えない”ようにシテイマス」
カサハラ
「え・・!?そんなこと、できるんですか・・?」
ヒノウエさん
「ハジメは、難しかったデスケド・・少しずつ体に沁み付いて言った感じデス」
完全ヤンキー
「全部取っ払うって、怖くないんか?俺やったら、頭の中が真っ白になってしまって、不安になってまうから・・・どうしても、キャラクターの軸とか、お芝居の段取りとかは、頭の中でずっと考えながらやってしまうな~」
ヒノウエさん
「そういう不安は、ヤッパリあると思いマス。デモ、演出家の言葉をお借りスルト、『”普段の生活”で、そんなことを考えながら生きているのか?』ということデス」
完全ヤンキー
「まぁ、せやな~・・・普段は、自分の軸とか、段取りとかなんて、考えながら生活はせえへんからな~・・やっぱりヒノウエさんに教えてもろても、難しいもんは難しいんやな~」
ヒノウエさん
「あ、デモ、1つだけ、アプローチのヒントをお伝えできることがアリマス・・!」