「え?・・・」
突然の質問に、僕は即答できなかった。
でも、僕には、夢があった。
それは「テレビに出る人」になること。
僕は小さい頃から、バリバリの「テレビっ子」。
ブラウン管の中で活躍する俳優さん、タレントさんが、凄くキラキラ見えた。
「いつか自分も、そんな世界に入りたいなぁ・・・」
漠然としていたけど、本気でそう思うようにもなっていた。
ただ・・・
こんなことは恥ずかしくて、誰にも言ったことはなかった。
「うーん・・・・
とりあえず、東京の大学いくから、
そこで何かやりたいことみつけようかな~」
やはり言えなかった。恥ずかしかった。
「じゃあ、タカモンは何か夢とかあるん?」
自分の話題を濁すように、彼に聞き返してみた。
すると・・・
タカモン「俺は、役者を目指そうと思う」
僕「え?」
僕は驚いた。
なんでか分からないけど、凄くバクバクした。
心臓がバクバクした。
詳しく聞いてみると、その年から開講される
新潟の俳優養成所に、タカモンは入所するとのこと。
彼は、俳優になることが夢だったのだ。
そして、その夢に向かって、
すでに歩み始めている彼が、とてもかっこよく見えた。
それと同時に、僕は自分が少し情けなくなった。
何も始めてもいないくせに、勝手に恥ずかしがっていて。
でも、僕は少し勇気を出して、
「・・・・実は俺もさ、そっちの方に興味あるんさ」
と、話してみた。
今でも覚えている。
心臓がバクバクバクバクだった。
タカ「マジで!それ、熱ちぃじゃん!」
僕「これ恥ずかしくて、誰も言ってなかったけど・・汗」
タカ「いいじゃん、一緒に目指そうぜ!
そしたら俺は大泉洋みたいに、地元で頑張ってから、東京いく」
僕「じゃあ俺は、東京で何かきっかけ掴めるように頑張ってみる」
タカ「それで、いつか共演できたら最高だな」
僕「だな!」
「同じ夢を持った仲間がいる」
そう思うだけで、僕は東京で頑張れる気がした。
それから3年・・・
僕は、きっかけを掴むどころか、
本当に何もないままだった。
大学の友達たちが就職活動をする横で、
小説の世界に逃げ込んでばかりの日々。
そしてその頃、タカモンの方は・・・
新潟の養成所を卒業したあと、
東京の芸能事務所に所属が決まったとのこと。
彼は、着々と自分の夢に向かって進んでいた。
それに比べて僕は・・・
夢に向かって何もしない。
だからと言って、就職活動も何もしない。
「何やってんだ俺は・・・」
自分の中途半端さに、ほどほど嫌気がさした。
と、そんな時だった。