マーシーとは、
コース変更をお願いしに行ったあの日から・・
一気に仲良くなった。
駅で待ち合わせをしてから、
一緒にレッスンに向かったり・・
DTM(作曲)の授業では
隣に席に座って一緒に楽曲作成をしたり・・
レッスン後には
ほぼ毎回一緒にご飯に行った。
こっそりと、
同じ秘密を持ったもの同志。
仲良くなれるのは
自然だったのかもしれない。
だからこそ・・
今抱えているこの思いを
マーシーに話したい。
きっとマーシーも、
同じ思いを抱いているはず。
その思いを、
二人で共有し合いたい・・・
いつものレッスンの帰り道、
僕はマーシーに、思いのたけを話すことにした。
僕
「マーシー、僕、やっぱり
これ以上みんなに隠し続けるのつらいです。」
マーシー
「いやいや、気にすることないでしょ。」
僕
「えっ?」
マーシーは、
全然、僕と同じ思いを抱いていなかった。汗
僕
「でも、隠し続けたままじゃ・・・同じクラスの仲間たちや、
親身になって指導してくれる講師の人に申し訳なくて・・」
マーシー
「え、何?お前はどうしたいの?」
僕
「え?」
マズイ。これはまた前回に引き続き・・
強烈な右ストレートが飛んできそうな気がした。
マーシー
「お前の正直な気持ち話してみろよ」
僕
「僕は・・・・」
僕は揺れ続けていた気持ちを・・・
それを思い切ってマーシーに話した。
僕
「やっぱり、僕・・・・
“音楽コース”でオーディション受けたいです。」
僕はマーシーと一緒にコース変更に行った日から、
ずっと悩み続けていた。
「本当にコースを変えてしまって良いのか?」
「日々のレッスンが全部、無駄になってしまうのではないか?」
「演技未経験なのに、演技レッスンにも参加できず、
果たして勝負のオーディションでいい結果が出るのだろうか?」
そして何よりも
コースを変更することで・・
これまで一緒に頑張ってきた仲間や、
指導してくれた講師の人たちの気持ちを裏切り・・
みんなとの大切な関係性がプツンと切れて
無くなってしまうのではないか・・・
様々な不安と恐怖が、
何度取り払おうとも、
ずっと僕にしがみついてきた。
僕にとっては、
今の気持ちのままレッスンを続けることの方が・・
このままの状態で
“俳優・タレントコース”でオーディションに挑むことの方が・・・
何よりも耐え難い。
いっそのこと、
今まで通り”音楽コース”を続ける方が・・・
平和的で、良い結果を望めるのかもしれない。
その気持ちを、僕は正直にマーシーに話した。
マーシー
「いやいや、お前、それは考えすぎだよ~」
僕
「・・・え?」
マーシー
「ハッキリ言って、みんな、お前のことなんて、そんなに興味ないぞ」
僕
「なっ・・!?」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
僕の中の”固く大きな”何かが・・
大きな音を立てて崩れ出した。
マーシー
「結局みんな、他人が何してようと、関係ないんだよ。お前はどうだ?
他のやつがコース変更しようとしてたら、”裏切られた”なんて思うか?」
僕
「い、いえ・・・確かに思わないかもです・・・」
マーシー
「だろ?所詮、みんな自分のことで精一杯で、
他人のことなんて気にしてる暇ないんだよ」
曇天模様の心の隙間から
一筋の光が差し込んだ。
マーシー
「だからケントは、周りのことなんて気にしないで、
もっと自分自身を大切にした方がいいよ。」
僕
「もっと自分自身を・・・」
マーシー
「多少嫌われても良いやくらいの気持ちの方が、楽だぜ?」
・
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僕の心の中は、
一気に晴れ渡った。