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禁断のボタン



あの日、
マーシーに気持ちを打ち明けてから・・


およそ2か月後の
12月の定期審査会、数日前。


年内最後のDTMの授業。





僕は、講師Fの作業テーブルの横に
椅子を持ってきて座っていた。



講師F
「そうだな~、カサハラは見た目が爽やか系だから、
アコギメインの、もっとアップテンポの曲調でいこう」






「僕、ギター弾けないけど大丈夫ですか?」





講師F
「ギターの音はPCで俺が打ち込んでやるから大丈夫。
お前はこの音源で歌うだけで良いから。」





この日は、講師Fから、


直前に迫った12月の定期審査会のために
オリジナル曲の編曲・ブラッシュアップをしてもらえる日。


僕の目前で講師Fはパソコンに向かい
見る見るうちに僕のオリジナル曲の完成度を上げてくれる。





「すごいですね・・」




講師F
「当たり前だろ。よし、こんな感じでどうだ?」





講師Fは出来上がった音源を
教室のスピーカーに繋いで流してくれた。


その楽曲はまるで


大自然の中のあぜ道を
自転車で駆け抜けるような・・


なんとも爽快感があり、
吹き抜ける風を今にも全身で感じられる



本当に素敵な
一曲に仕上がっていた。






「か、カッコイイ・・・」



教室にいた仲間たちも
それを聴いて、いいね!いい!
と盛り上がった。



講師F
「どうだ?いい感じだろ?」




「はい。最高です!この爽やかさなら、一段と・・」



講師F
「ん?」





「あ、いえ。何でもありません。」





講師Fが怪訝そうな顔をしたので、
僕は笑顔で返した。



講師F
「これで音源は完成だから、もう絶対いじるなよ。
あとはしっかり歌の練習をして、審査会、楽しみにしてるからな。」





「はい!ありがとうございます。楽しみにしててください。」










そして、

その日のレッスンが終わると、
僕は一人ですぐさま家に帰り・・


パソコンに入っている
音楽編集ソフトを起動させた。




そして、講師Fに作ってもらった
オリジナル曲の音源をパソコンに読み込ませると・・・



僕は、全身に行き渡った
かたい緊張感をほぐすように



大きく息を吸って・・・



ゆっくりと吐いた。




「ふぅ~・・・」





講師Fの言葉が頭をよぎる。







( 『これで音源は完成だから、もう絶対いじるなよ。』 )













2カ月前の、
マーシーの言葉が反芻する。




(「周りのことなんて気にしないで、もっと自分自身を大切にした方がいいよ。」)

(「多少嫌われても良いやくらいの気持ちの方が、楽だぜ?」)









僕は・・・





覚悟を決めた。






もう、後戻りはできない。

いや、もう振り返らない。


まさに背水の陣。






「もう、なにがどうなっても構わない・・・
これは、僕の人生。悔いの残らないように生きるのだ。」






そして、僕は意を決して・・















禁断の「”編集開始”ボタン」を押したのだ。










つづく・・・




P.S.

コースを変更したことを内緒にして過ごすのは本当にきつかったですね・・・汗

でも、やはりマーシーは強引と言うか、芯が強いというか、全くその環境に動じていませんでしたし、それどころか、「俺、作曲苦手だから、ケントが代わりに作ってよ」と、メロディとイメージだけ伝えてきて、DTMの時間に僕がマーシーの曲を作るなんてこともしてました。笑


次回!!


「これで完成だから、もう絶対いじるなよ」と講師Fに念を押されたカサハラ青年だったが、その夜まさかの奇行に走る。そして迎えた12月の定期審査会。講師Fに作ってもらったオリジナル曲を披露するも、メインのサビに差し掛かるところで、審査員も驚愕の事態が起こる。その時、カサハラ青年がとった行動は・・・・


お楽しみに~!



カサハラケント



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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。