#オーディション #コラム #俳優 #新潟 #新発田市 #音楽 #養成所
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「こんにちは!オーディションへようこそ!」


入口の手前で、
ややテンション高めな、
笑顔の素敵な“ガタイのいい人”が迎えてくれた。




「こ、こんにちは!」



ガタイのいい人
「エントリーシートをお預かりしますねっ!」




僕は、その勢いに押されながらも
エントリーシートを渡した。




ガタイのいい人
「ふむ、カサハラケント君ね。よろしく!」





「よ、よろしくお願いします。」




ガタイのいい人
「えーと、カサハラ君は、“音楽コース”を希望ね。
そしたら審査で使うCD音源を用意して、空いている椅子に座ってお待ちくださいっ!」





「…は、はい、わかりました。」





控室の中には、すでに20人近くの参加者が
緊張した面持ちで椅子に座っている。





僕は空いている椅子に座る。 そして愕然とする。









「やべぇ、CD音源なんて用意してねぇ・・」







僕は、持参した“オーディション雑誌”
募集要項を確認した。









「※音楽コースを希望する方は、
審査で歌うCD音源をご用意ください。」








「な、なんてこった・・・」




とてつもなく大事な部分を、
完全に見落としていた。



や・・やってしまった・・・






よく芸能界では
礼儀正しく“ちゃんとした人”が生き残る」と聞く。





ましては、このオーディションは
芸能界を目指す夢追う者たちがつどう

「芸能養成所の入所」をかけたオーディション。



そのオーディションの審査の大前提には
「ちゃんとした人」という条件は間違いなく必須である。





そのオーディションの審査で必要な
『CD音源』を忘れてくるなんて・・・




『え?何しに来たの?』

『音楽コース受けるんだよね?』

『本気で目指す気ないんじゃない?』






と、僕が審査員の立場だったら
絶対に最低評価を下してしまう。




「な、なんてこった・・・」




少しでも合格する可能性を高めるために、
“俳優コース”から“音楽コース”に変えたのに・・・







これでは本末転倒だ。





このまま音楽コースで受けたら、
確実に不合格になってしまう。






「なんとかしなければ・・・」



僕は少しでもこのピンチを脱することができないかと
周りの様子を見渡した。




「・・・おや?」




何やら台本のようなものを持っている人がチラホラいる。


「あの台本って、
もしかして“俳優コース”の人が演技審査する台本・・?」




控室にいる何人かが、台本を覚えるためか
小声でぶつぶつセリフのようなものを口に出している。




「やっぱりそうだ!
俳優コースは演技審査の台本を渡されて、今セリフを覚えてるんだ。



ということは・・・」







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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。