「なんだか勢いのまま話が進んでしまったけれど・・
本当にこれで良かったのだろうか・・・」
マーシーに、そして、
ガタイのいい人(教務課の人)に言われるがまま、
僕は最後の勝負のオーディションに
“俳優・タレントコース”で挑むことに・・
そう、まだ見ぬ
「演技」というジャンルで挑むことに・・・
僕は、大きな不安を抱えていた。
しかも、ガタイのいい人からは
「他の人に影響が出るといけないから・・
変更することは生徒にも講師にも、とりあえず話さないでほしい」
と言われたことで
この不安を誰にも打ち明けることも、
相談することもできない。
唯一この話を出来るのは
“マーシー”だけ。
しかし、マーシーは
演技力に自信を持っているので
同じ悩みや不安で
共感することもできず・・
僕は、悶々とした気持ちのまま引き続き、
音楽コースのレッスンを受け続けることとなったのだった。
9月の定期審査会が終わると、
上位20人に選ばれた
いわゆる“認められたメンバー”は
一足早く10月の
“勝負のオーディション”に向けて準備に入る。
そうなると普段のレッスンも
この“10月組”のために時間を割くことが多くなった。
ステージングのレッスンでは
主に“10月組”がパフォーマンスをし、
講師がみっちりと指導。
残り組のメンバーは、
基本的に見学。
DTM(作曲に授業)でも
講師は10月組の楽曲のブラッシュアップに力を入れ、
残り組は、黙々と自分のオリジナル曲の作成。
「こうも対応が変わってしまうものなのか・・・」
分かってはいるのだ・・
間近に控えた勝負のオーディションに向けて
講師、教務課のスタッフが10月組のために力を入れることは・・
当たり前のこと。
きっと10月組の
“勝負のオーディション”が無事終われば、
“残り組”の僕たちにも
ちゃんと力を入れてくれるはず。
それは、もちろん分かってはいる。
でも、やっぱり悔しさがこみ上げる・・
個人的には“準特待生”として
入所したという立場だったし、
おそらく教務課の人や講師の人も
「こいつは期待できるかも」
と思ってくれていただろうから・・・
この、今の状況がとても悔しく、
とても情けなかった。
しかも、そんな中・・
上手くいかない現状から
逃げるかのように
“俳優・タレントコース”へ
コース変更をすることになり・・・
僕の心は、
かなり大きなダメージを受けていた。