それからのことは・・・
ほとんど記憶に残っていない。
きっと”遺族たちのシーン”も
問題なくこの作品の世界観を作れたのだろうと思う。
おそらく僕の演技も
僕が作り上げてきた
”神谷椎太郎”というキャラクターも
その世界の中で、
ちゃんと存在できたのかもしれない。
ただ、扉が開いて
一気にステージ上に雪崩れ込んだ瞬間・・・
目を細めたくなるような強烈な照明
そして
僕らを飲み込んでしまうような
客席からの圧迫感を感じた直後から
公演中の記憶が
本当に残っていないのだ。
そして、気がつけば・・・
僕は、ステージ上の
一番後ろの片隅に立っていた。
カーテンコールだった。
客席からの
割れんばかりの拍手がステージ上を包み込む。
お客さんの顔はどれもみな
満足感に満ち溢れているような・・・
”良い顔”ばかり。
きっと・・・
最高の舞台を
お客様にお届けできたのだと思う。
その瞬間、僕の胸に
熱いものがこみ上げてくる
「(これが、舞台なんだ。これが・・役者という職業なんだ」