場当たりが終了すると
キャストはそれぞれ支度を整えて、帰路についた。
僕と完全ヤンキーは前夜に続き
近くのチェーン店で少しだけご飯を食べて帰ることにした。
完全ヤンキー
「なんとか場当たりも終わったし、あとは明日のゲネプロ。そして、本番やな~」
カサハラ
「ついに、ここまで来ましたね・・・今から緊張で震えてしまいそうです」
完全ヤンキー
「まぁ、初めてのケントはそりゃ緊張もハンパないやろな~」
カサハラ
「完全ヤンキーさんは緊張しないんですか?」
完全ヤンキー
「まぁ、さすがに本番直前はするけどな~まぁ、それよりも、舞台に立てるワクワク感の方が勝る感じやな~」
カサハラ
「さすがですね・・その辺の心臓の図太さは感じます(笑)」
完全ヤンキー
「なんや?緊張してるとか言いながら、ちょっと明るい感じやん~!昨日までのケントは表情ガチガチで強張ってばっかりやったで~」
カサハラ
「え?そんな感じでしたか!?」
完全ヤンキー
「せやで~!まぁ、今日の場当たりでケントも芝居が吹っ切れた感じがするからな~それで、余裕が出てきたのかもしれんな」
カサハラ
「そうですね・・なんか自分の中でスッキリした気持ちになりました・・!」
完全ヤンキー
「本番までに気づけてホンマに良かったな~!あのままやったら、芝居が嫌になって、役者辞める、なんてことになってたかもしれへんしな~」
カサハラ
「確かにそうですね・・そのくらい悩んでたので・・あの状態のまま本番迎えて、何もできないままだったらきっと・・・”役者って道は違うんだろうな”って思って、本当に辞めようと思ったかもしれませんね・・・」
完全ヤンキー
「ってことは、今は“この世界に入って間違いじゃなかった”って思えてるってことやもんな~」
カサハラ
「・・・はい!」
完全ヤンキーには
本当に感謝の気持ちしかない。
この出会いがなければ
きっと僕はこの”夢”を
諦めることになっていたに違いない。