それから間もなく
開場時間となった。
劇場の入り口から
お客様がゾロゾロと入ってくると・・
受付でチケットのやり取り、客席での談笑や
スタッフさんのアナウンスなど、
パーティションを挟んだ向こう側の”音”が
舞台裏の通路の端っこまで聞こえてくる。
少しずつ”本番”が
迫ってきているのを感じ取れる。
「では、まもなく本番を開始します」
舞台監督が小走りで各控え場所を回り
キャスト全員に小声でそうアナウンスをした。
ゲネプロが始まる前と同じタイミングだ。
「(ゴクリ・・)」
緊張が喉の奥に流れ落ちる。
オープニングミュージックが
劇場内に流れ出す。
客席は少しざわつき始める。
お客様
「(もうすぐ始まるのね・・!)」
そんな高揚感が伝わってくるかのような
客席からのざわつきだ。
そして、ゆっくりと照明が落ちていき・・・・
客席側は完全に真っ暗となった。
すると、客席は一気に静まり返る。
「では、容疑者役のみなさん、舞台上にお願いします」
舞台監督が小さな声で合図すると
容疑者役の8人はゆっくりと・・・
真っ暗闇のステージ上に用意された
自分の座るパイプ椅子を目掛けて歩き出す。
8人全員がパイプ椅子に座ったことを
舞台監督が暗視カメラで確認すると・・
照明・音声スタッフに向けてインカムで
「準備OKです」と小声で告げた。
すると、オープニングミュージックは
どんどん音量が上がっていき、客席と舞台裏を煽る。
そして、オープニングミュージックが
最大の盛り上がりを見せたところで・・・
「プツン」
と音が止まる。
劇場内にすべてに・・
一瞬の静けさが訪れた。
客席の数か所から
息を飲む音が漏れてくる。
すると・・・
「カチャカチャ・・」
手錠の鳴る音が微かに聞こえ始める。
「ギィィィ・・」
パイプ椅子の
きしむ音も場内に響き渡る。
その瞬間
僕にとって
“初めて”の舞台の幕が
切って落とされたのだ。
つづく・・・