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その掌は、異様なほど”真っ白く”染め上げられていた



「(はぁはぁ・・全然ドンキ遠いじゃねえか・・・)」


新宿の街があまり詳しくない僕は
スマホ片手にドンキまでの経路に沿って走り続ける。


結局距離にして、およそ1キロ弱。


少し迷ったこともあり
到着に10分以上かかってしまった。



「(帰りも10分くらいかかるとして・・劇場での不在時間をこれ以上長くするわけにはいかない・・さっさと買って戻らなければ)」


僕はいろんなグッズが陳列された店内を駆け回り
なんとか”化粧品コーナー”を見つけることができた。


「(よし、この中から必要なものを・・って何を買えばいいんだ!?)」


当然のことながら
”お化粧”をした経験などゼロだ。


「(ここで、悩んでいてもラチが明かない。店員さんに聞こう!)」


僕は、女性店員さんを探し
化粧品コーナーへと戻ってきた。


簡潔に

”舞台で必要なのメイク道具”を探している

と伝えたが・・

こんな客は初めてだったのだろう
その女性店員さんも少し困惑した様子だった。


結局

ドンキには”舞台専用”のメイク道具と言う
モノは取り扱っていないということで・・


女性がお化粧をする時に
よく使うグッズを最低限だけ教えてもらい

それを購入することにした。


「(くっ・・痛い出費だ・・・)」


でも、これで

メイクをしてなくて怒られる

という状況からは回避できそうだ。


僕はお世話になった女性店員さんにお礼をして
再び劇場へと走り戻った。


こっそりと入口から入り
通路の端っこにある我らの”控室”に戻ろうとすると・・


舞台裏が、少しざわついていた。


「(どうしたんだろう?)」


完全ヤンキーが
僕の姿を見つけると


完全ヤンキー
ケント!これから場当たり開始するみたいや!とりあえずみんなステージ上に集合って言われたから、はよ準備せぇ~!



カサハラ
「え!?マジですか!?わかりました!!」



ギリギリ・・!!

本当にギリギリだ・・!!!


いや、でも待て・・


このままステージへ
上がってしまったら結局・・・


”メイクをしていない”ことになってしまう・・


「(それでは、ドンキに走った意味がない!!とりあえず・・)」


僕は買ってきたメイク道具の中の
”ファンデーション”に手を伸ばし・・

ビニールを破り、キャップを開け
とりあえず掌にソレ出して、顔に塗りたくった。


「(クッソ、鏡がないからどんな状態かわからない・・)」


鏡のない、薄暗い通路の端で
とりあえずファンデーションを顔の隅々まで塗のばし・・・


「(もう、ステージ上へ行かないと・・!みんなを待たせてしまう・・!)」


僕はファンデーションを伸ばしながら
客席の扉から中に入り、みなが集合しているステージ上へと駆けあがった。


カサハラ
「すみません、遅くなりました・・!!」



すると・・


演出家
・・・・いいじゃないか、その顔



カサハラ
「・・・え?」



なんのことだ?


周りのキャストのみんなは
ポカンとしていたが・・・

だんだんと笑いを
堪えるように顔を隠し・・


横にいた完全ヤンキーは一言だけ


最高やで


と。


何?何!?

どうなってるの!?

今僕、どうなってるの!?


確実にみな
僕の顔を見て吹き出している。


しかし、鏡がない。


自分の顔を確認できない。



「(クソっ・・確実にメイクが悪影響しているに違いない・・でも、確認できない・・・今僕の顔は・・僕の顔はどうなっているんだ・・!?)」


すると・・・


ふと、自分の掌が目に入った。


「(こ、これは、まさか・・・)」



その掌は、


異様なほど、
”真っ白く”染め上げられていた。



つづく・・・

P.S.


いやぁ、もう、小屋入りは、こんな感じにハチャメチャでしたよ。笑
今でも思うんですけど・・・あの時、完全ヤンキーさんがメイク道具貸してくれたら、あんな大変なことには、ならなかったんじゃないかって・・・汗
まぁ、それが良い方向に向かえば良しなんですけど。笑


次回!!

場当たりの時間に間に合うようにドンキまで走り、なんとかメイク道具を買ったカサハラ青年であったが・・塗り方が酷過ぎて、みんなから笑いものに・・しかし、その時、とある人のまさかの一言で、状況は一変したのだった・・・

お楽しみに~!


カサハラケント


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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。

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