遂に、役者人生初めての
”稽古”に参加するカサハラ青年。
紆余曲折ありながらも
何とか食らいついていき・・
自身の演じる役である
”神谷椎太郎”のキャラクターを
どんどん作り上げていく中・・
本番まであと5日というところで
突然、演出家から
「遺族たちにもセリフを与えよう」
と切り出された。
本来ならば喜ばしい
展開のはずだが・・・
お芝居ド素人のカサハラ青年にとっては
とてつもないプレッシャーとなり
結局、セリフを与えて
もらえずに終わってしまった・・
そして、フワフワとした不完全なままの
”神谷椎太郎”というキャラクターを引き下げ
ついに”小屋入り。
そして、”場当たり”が行われているさなか
完全ヤンキーからとある”お題”を出され・・
さらにカサハラ青年は、頭を抱えるのであった・・
「そろそろ寝るか・・・」
我に返った僕は
毎日使っている洗顔フォームをたっぷりと掌に出すと
それを細かく両手で泡立てた。
泡立てる最中に何度か少量の水を
加えて混ぜ合わせてゆくと
それはだんだんとホイップ化していき
小さなマシュマロマンが出来上がる。
「よし良い感じだ」
真っ白に染め上げられた自身の顔に
それまた真っ白なマシュマロマンをこすり込む。
両手でしっかりとこすり続けると
僕の顔にも少しずつ肌色が浮かび上がってくる。
「ちょっと、これはやり過ぎたな・・・」
小屋入り1日目はいろんなことがあった。
僕は抱えきれないほどの不安や、緊張感
そして、それらを一挙にまとめたような”恐怖”から一時的に解放されると
客観的にみて
”ちょっとおかしな”行動を取る癖がある。
某養成所での初めての
”審査会”を終えた直後もそうだった。
瞬間的な解放感からか、
何故かそのまま家には帰らず
突発的に”熱海で一泊”してきた。
理由は自分でも
本当に分からないもので・・・
何か自分の中で逸脱していたものを
グイっともとの線路に引き戻すというのだろうか。
今回は
”夜な夜な洗面所の鏡の前で、自らの顔を白く塗りたくる”
という行動がソレだったのだ。
ただ、そのおかげで
大分気持ちはスッキリすることが出来た。
「やべえ、全然落ちねぇ・・」
ファンデーションはきっと
ちゃんとした”メイク落とし”を使うべきなのだろう。
その辺のコンビニに売っているような
男性用の洗顔フォームでは・・・
寝床に向かうまで
なかなか時間がかかってしまった。