ストレッチレディの様子を横目で見ていた
百戦錬磨の男女2人も、


だんだん状況を把握していき
おのおの「お風呂に入る」演技をスタートしていく。



「おお・・この2人もストレッチレディに劣らずの演技だ・・
幾多の修羅場を越えてきたであろう経験とスキルは伊達ではない・・」



ストレッチレディに対抗する2人の演技にも

僕は釘付けになっていた。



それから3人は、身体を洗ったり湯船につかったり、
それぞれの「普段のお風呂」の様子を再現していくが・・・

・

・

・


「え？これいつ終わるの？」



スタジオの端にある壁掛け時計に目をやると、
開始からすでに20分近くたっていた。



周りの参加者や
演じている百戦錬磨の男女2人も


「いつまで続くのだろう・・」


と、ざわつき始める。



すると・・



百戦錬磨の男性
「すみません、お風呂上がっちゃいました。」


と言い、演技を終了した。



そりゃそうだよね・・


この人普段は
「10分くらい」って言ってたし、


そりゃ、20分も経てば終わっちゃうよね・・


演技を終えた男性は、
その場で体育座りをすると・・


演出家からの
終了の合図を待った。


すると、


しびれを切らしたように
百戦錬磨の女性の方も

「私も、終わりました」と言い、
演技を終了して、体育座りをした。





「ふぅ・・これで、この審査も終了かな・・」




と僕は思った。




・・が




演出家
「・・・・」



演出家から「終了の合図」はない。



「え・・？もう審査対象の2人の演技は終わったよね？
これ以上続ける必要なくない！？」


しかし、それでも演出家は沈黙を続けたままだ。


そんな中、

ストレッチレディは湯船に浸かり続けている。
その様子を、演出家はじっと見続けている。



「え？ストレッチレディって、このオーディションのスタッフさんだよね？
これ、何の時間！？」


演出家はじっと
ストレッチレディの演技を見続けている。


「なんで演出家は、
このストレッチレディの演技を見続けるの！？」


演出家はじっと
ストレッチレディの演技を見続けている。


「え・・、ストレッチレディって、お風呂に入るの２時間っていってたよね・・
まさか、2時間このまま続かないよね！？」


演出家はじっと
ストレッチレディの演技を見続けている。


「どういうこと！？どういうこと！？」


もう全く訳の分からない状況に、
僕は混乱していた。


そして、演技開始から
30分くらいが経過したとき・・・



演出家
「パン！はい終了。」




突然、審査は終了した。