良かった・・
マジで2時間ストレッチレディの
お風呂の様子を見せられるかと思った・・
と言っても、30分間も
「お風呂に入る」演技をさせられるのもエグすぎる・・
僕は改めてこの時
「挙手しなくて良かった」と思った。
演出家
「えーと、演技をしてくれた2人だけど」
2人
「はい・・!」
演出家
「なんで、途中でやめちゃったの?」
2人
「・・・え?」
突然の問いかけに、
スタジオ中に緊張感が走る。
百戦錬磨の男性
「えーっと・・僕、いつもお風呂の時間短くて、上がっちゃってしまったので・・」
百戦錬磨の女性
「いつもより少し短めのお風呂になっちゃいましたけど、私もお風呂から上がっちゃったので・・」
2人は困惑しながらも、その理由を述べた。
すると・・
演出家
「えーと、
やめろと言われる前に演技をやめるのは、
絶対にしてはいけないことです。
審査員は、あなた達の演技をもっと長く見ていたいのに、
自分からやめるのは
それを“放棄”したことと同じです。」
2人の表情が一気にひきつる。
演出家
「という訳で、お2人は今回の審査を放棄したということですね。ありがとうございます。」
スタジオ中が凍り付いた。
「え!?厳しくない!?勇気をもって手を挙げた2人なのに・・」
演出家
「では、5分休憩にします。そのあと、今日最後の審査をするので準備しておいてくださいね。」
そう言うと、
演出家はスタジオの階段を上がり外へ出て行った。
「ふぅ~」
参加者たちは一斉にみな脱力した。
あの只者ではない演出家を前にして、
みな同じように緊張と恐怖で押しつぶされそうになっていたのだ。
ドリンクを飲んだり、トイレにいったりと、
与えられたわずかな時間の中で・・
休憩後に訪れる「この日最後の審査」に向けて
おのおのリラックスしたり、準備をしたりしていた。
そんな中・・
「お風呂に入る」演技を途中で
辞めてしまった2人はスタジオの中央で
もう目も当てられないほどの沈んだ表情で、
あの“厳しい言葉を言い放たれた状態のまま座り込んでいた。
「舞台の出演を賭けたオーディションのライバルとは言え、
さすがにこの仕打ちは心苦しすぎる・・」
僕は2人のようすを見て、同情する気持ちと
「挙手しなくて本当に良かった」という安堵感に包まれてると・・
「え?なんでストレッチレディも、まだ座り続けてるの!?」
その2人の横で、
何故かストレッチレディも体育座りをしながら、ボーっとしていた。
「別にストレッチレディは
演出家に何かを言われた訳でもないし・・
ましてや、ストレッチレディは
この舞台のスタッフさんな訳だから審査対象でもないのに・・
なんであの2人と同じように座り続けているんだ・・
一体、何なんだこの人は!?」
僕はその異様な光景を・・
奇妙な行動を取り続ける
ストレッチレディの様子を
じっと見ていた。
すると、僕は
ある驚愕の事実に気がついた。
「ストレッチレディ・・・
まだお風呂に浸かっている!!!」