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僕は閃いた。





「今から”俳優コース”に変えれば、
このピンチを脱することができるかもしれない・・!






CD音源の用意を忘れるという致命的なミスを犯してしまった今、
合格の可能性が高いのは「俳優コース」となった。



ただ僕は、すでに
「音楽コース」でエントリーしてしまっている。




これはうまく言って
俳優コースに変更してもらうしかない。





ただ、注意すべきは、
「CD音源を忘れてしまった」と正直に話してはいけない。





「君の夢は、そんなにコロコロ変わってしまえるものなのか?
そんな人に養成所にくる資格はありません」






と、一発不合格にされてしまう
可能性もなきにしもあらずだから。





「ここは慎重にいこう・・・ よし、シナリオはこうだ」

ふわぁぁぁぁん
~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「すみません、俳優コースの人って、あの台本を配られて、今覚えてるんですか?」





ガタイのいい人
「そうだよ。みんな今必死にセリフを覚えているんだよ」





「そうなんですね・・なんか俳優って素敵ですね。」





ガタイのいい人
「え?」






「なんて言うか、表に出るまでに裏で積み重ねる準備というか・・
ひとつのセリフを話すためにかける想いというのを、彼らの姿を見てとても感動して・・」




ガタイのいい人
「・・・もしかして、カサハラ君、俳優コースに興味をもったのかい?」





「いえ、そんな・・・もちろん音楽をやりたいんです!コロコロ自分の夢を変えたくないですし・・・でも、もしかしたら俺が本当に目指すべきなのは俳優の道なのかもしれない・・




ガタイのいい人
「・・・・ええやないか。」





「え?」





ガタイのいい人
「君は、俳優コースを受けるべきや。」






「え・・・今からでも、変更できるんですか・・・?





ガタイのいい人
「あぁ、こんな純粋な君の気持ちを聞いてしまったらなぁ。私の方でエントリー変更の手続きをしておくから安心しーや。」





「か、かたじけねぇです!」




ガタイのいい人
「はい、これが演技審査の台本になるから、しっかり読み込んで、オーディション本番に備えてなっ。」





「はっ、はい!!!」




ガタイのいい人
「頑張るんやで、カサハラ青年。」





「絶対に夢を掴みます!」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ふわぁぁぁぁん






よっしゃ、このシナリオならいける。それどころか、この熱い気持ち伝えるだけで 無条件合格になるかもしれないぜ。



みなが台本のセリフを口ずさむ中、
僕は頭の中に描いたシナリオを口ずさみながら、


ガタイのいい人のもとへ向かった。




「すみません、俳優コースの人って、
あの台本を配られて、今覚えてるんですか?」









ガタイのいい人
「違うよっ!

募集要項にも案内していたけど、

あれは事前に送ってあった台本データ
各自が印刷して持ち込んでいるんだよ。


きっとみんな家で必死に覚えてきたんだろうけど、
直前までセリフの確認をしているんだね。


その姿勢、素敵だよねっ!」






「はい、素敵ですね。」




ガタイのいい人
「何か用ですか?」






「いいえ、何でもないです。ありがとうございます。」







終わった。



あの台本は、事前に配られていたものだった。






同じ土俵で勝負できるどころか、
もう勝負はついていたのだ・・・




同じオーディションルームに集まった、
同じ夢を追いかける仲間たちには、

「俳優になりたい」「歌手になりたい」
という明確な目標があった。






だからこそ、ちゃんと事前に準備して、練習して、
今日の大事なオーディションに臨んでいるのだ。




それに比べて僕は
「テレビに出る人になりたい」
という漠然とした夢しか持っていなかったから、




少しでも合格できる可能性が高い方を選ぼうと、
直前まで「俳優コース」にするか「音楽コースに」にするかだけを悩んでいて・・・



とても大切な部分が欠落していたのだ。
もう彼らとは、話にならないレベルの差だった。



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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。

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