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10/24公演迫る!鼓童×KURAGE Band スペシャル対談「たゆたう」(下)

イベント

2026.10.24

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10月24日(土)に迫った、新潟市・りゅーとぴあ劇場で開催される『鼓童×KURAGE Band特別公演 たゆたう』……大阪・関西万博でコラボレーションした「太鼓芸能集団 鼓童」と「KURAGE Band」の2組が、万博閉幕から1年という時を経て、新潟の地で新たなステージへと昇華する、まさに万博から生まれた“レガシー”と言える歴史的な公演となる。この2組の出会いと特別公演に至るまで、そしてこの公演に込めた思いなどを、KURAGE Bandのリーダーで大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサーを務めた中島さち子氏、そして太鼓芸能集団 鼓童のメンバー・前田順康氏の2人が約2時間半にわたって熱く語り合った。 (上・中・下の3回で掲載します)

創造力を広げる

ⒸKURAGE Project _ steAm, Inc.

KURAGE Band中島さち子(以下、中島):大阪・関西万博のクラゲ館のプロデューサーを務めましたが、なぜ「クラゲ」という発想だったのかというと…まず、そもそも創造性にとっては何が大事なのだろう?とみんなで考える中で、やっぱり「ゆらぎのある遊び」が大事だという話が出ました。たとえば滑り台は滑るもの、とか、縄跳びはこうやって遊ぶもの、とか、アミューズメントパークに行ったらこういう“決められた”遊びがある…それも大事だと思うのですが、そういう遊びというより、たとえば砂場で遊んでいたら最初に思っていたものと違うものをいろいろと作りたくなってくるような、「ゆらぎのある遊び」がやっぱり大事だよねと。「いのち」も同じで、遊びみたいなもの……朝起きられない人、モノをなくしてしまう人……私がそうなんですが(笑)いろいろな人がいるからこそ、たとえば天変地異が起きたときに生き残る人がいたりする……いのちにも、ある意味での遊び、ゆらぎのある遊びが大事だとみんなで話したのです。もう一つは、「言葉で説明しなさい」「説明責任」とよく言われますが、「言葉じゃ説明できないものは山ほどあるよね」と思ってきました。身体的なもの、AI(人工知能)では説明できないもの、そういうものを表現したいとみんなで話している中で、「クラゲ」というよくわからないものが私たちの思いを象徴するものとして生まれてきたんです。
鼓童・前田順康(以下、前田):「生物多様性の大事さ」ということだと思うのですが、みんなが同じ方向を向くことへの嫌悪感というのは本能だと思うんです。遺伝子の多様性が高ければ高いほど、種は生き残る。今日では「多様性」と言いつつも、本当にこれは多様化なのか?と思う社会の動きもあります。その一方、「海」はいいなと思うんです。クジラも海藻もクラゲもペンギンも、いる。みんながバラバラなようで関わり合っている。共生ではなくて「共存」している。良い共存関係にあります。海の生物は32万種いると言われている。人類1種でも分かり合えないけれど、海は32万種で共存している……今こそ人間は海の生き物に学ぶべきかも。この「クラゲ」というキーワードから、この公演を見た人が帰路の途中で「クラゲ」を調べてくれたら面白いですよね。
中島:「クラゲ」と「たゆたう」とは、根っこが近いと思います。
前田:これは韓国の太鼓「チャンゴ」の演奏者であるチェ・ジェチョルさんから聞いたお話しなのですが、チェさんの教え子で素潜りをする方がいて、その人たちの間でよく話題になることが「クジラは地球の裏側のクジラとやり取りができる」という話でした。携帯もインターネットもないのに。超低周波の音を出せるので、その音が遠くまで届くらしいです。植物も動物も伝達方法があって、それを人間が感知していないだけなんです。そういうものをどうにか表現したいという思いが自分にはあって、音楽や芸術の役割とは「創造力の拡張」というものが一つあると思っています。たとえば美術館で大きな絵を見ると、こういうことを人間はやってもいいんだ、と思うように。鼓童とKURAGE Bandが関わることで「創造力」が広がっていく。ジャンルを飛び越えたことでそもそも何をつくるのか、具体的なリズムよりもどういうことを私たちは考えていて、何に喜んでいて、何に悲しんでいて……イマジネーションはそこから生まれるのではないかと思います。自分に音楽があってよかった、と思えています。たまたま自分は音楽でしたが、みんなそれぞれの何かがあるはずで、体を動かす、拍手をする……それぞれの皆さんが何かの表現をできる、そういう場を鼓童も作りたいと思っています。
中島:それは面白いですね。やすさんの思いをたくさん聞けて楽しいです。

一緒に作った舞台の絵

前田:KURAGE Bandの皆さんの音楽はジャズベースの即興性のある音楽で、僕もこの2~3年くらい一人で即興をやっていて、即興でセッションすると相手の音を特に注意深く聴くんです。これは鼓童の合奏ではあまりなかった感覚で、もちろん聴いてはいるんですが、エンジニアが音をMIXする時のように大きさやバランスを気にするような耳の使い方です。即興の耳の使い方って、この人は何を言っているんだろうという耳の使い方で、即興音楽をやることは僕がこれまでにお話ししたこと、感じたことへのアプローチになっているんです。即興をやると、すごく人間臭くなる。「鼓童の人も即興になるとこんな感じなんだ」というふうに人間性が出てくる。わーっと行く人も、引っ込んじゃう人も……パーソナリティーが出てくるんです。それは今までの鼓童の公演とは明らかに違う音楽的要素の一つです。みんなの中の瞬間瞬間で起きるゆらぎは音楽という枠を越えていくのでは、と。即興でアンサンブルをするときに他者をよく意識した音楽に変わる。でも自分の主張もしなければならなくて、、、これが社会や人間だなあという気持ちにさせてくれる。それはその日のお客さんによっても変わります。たとえば雨が降ったら、ちょっと不快な気持ちのまま、一曲目を待っているかもしれない、としたら、そこにどう周波数を合わせるかというのも醍醐味。いつもと違う方法で僕らも客席の皆さんと感じているのが今回のポイントで……あなたのそのリアクションが僕の次のフレーズに影響しますよというふうな自由さがあります。
中島:舞台背景の絵もみんなで一緒に作ってきたので、その場にいない人も一緒にその公演を作るのが今回の特長で、その作業はとても楽しかったです。一人ひとりがみんな違う素晴らしい表現をしてくれました。
前田:「さんろーど」のみなさん、新潟清心女子中学・高等学校のみなさんと高校生の皆さんと音に合わせてペイントしたものを当日の舞台に飾ります。音に合わせて絵を描く、それがあることで僕たち同士、つながることができる。スタジオで音楽を作るだけではなく、自分がやってみたかったこととKURAGE Bandの皆さんがやっていることが一致したので今回取り組んでいます。

「さんろーど」でのワークショップ

中島:万博のクラゲ館で「ロゴ」を作るプロジェクトをやった時に、天井も壁も色を塗れるようにして、ごちゃごちゃになりながらみんなで即興的に自由に絵を描きました。絵の具の風船を投げたり音楽も一緒に奏でながら…その中からクラゲ館のロゴとして似合いそうな部分を切り取ってロゴが生まれました。詠み人知らずのロゴなのです。クラゲ館の衣装も、ロゴをベースにしながらも、一人ひとり揺らがせて、みんなデザインが違いました。そんな話をしていたら、確かチェさんがみんなで絵を描こうと提案し、やすさん(前田さん)たちがその想いをテレビ新潟の皆様とともに、とても素敵な形で実現してくれた!万博での体験が今回の新潟のワークショップに繋がって、とても嬉しかったですね。舞台でどんな風に見えるのかも楽しみ!
前田:公演の時間だけが、「たゆたう」の時間ではない。この舞台で受け取ったものをまたどう過ごすか。局所的な時間ではなく、小さな瞬間、瞬間が積み重なって今の公演に繋がって、それを見た人が記憶に残っていって、それがまた次の何かに繋がる。幕をインストールすることでそういうものを残したいと思います。
中島:​みんながお客さんというより、作り手としてやってくる訳ですよね。私はもともと「創造性の民主化」と表現していて、みんなが持っている創造性を開いていく社会にしたいと思っていて……作り手となるとみんな目がキランとするというか、誰しもカケラが作れる、と思えるとやっぱり楽しい。

ここから生まれる第一歩

前田:今回の公演を「アフター万博」の企画の一つとしてするのですが、僕も万博に行くまでは「技術のショーケース」だと思っていたんですが、実は僕がこれまでに話していたような創造性や理想を、技術で叶えていくことだったというのが面白かったですね。人が動いて広げていくことは続いていくべきだなと思っていて、アフター万博の企画であるこの「たゆたう」が、首都圏などの大都市ではなく、新潟市から取り組めることがうれしいです。それが47都道府県だけでなく世界中に広がれば、その最初が新潟で、これをスタートに新しい表現が生まれてくるのではないかという期待があります。1個目のモデルを作る時に、自分たちのホームでできるのがうれしいです。そもそも、KURAGE Bandは万博が終わったら解散だと思っていたんです。大変失礼なんですが(笑)。活動がいまでも続いていて、そこに鼓童もご一緒して、それもある種ゆるやかな繋がりだからだと思っています。毎回新鮮に皆さんと「音」を表現している感じが楽しいですね。
中島:本当に楽しいですね。万博が開催された本当の意味は、期間中に何万人来た、とかではなく、むしろこれからだよね、と思っています。世界中で大変なことが起こっていますが、「たゆたう」精神で、人間はみんながいろいろで、性格もいろいろ……でもそれが面白いという意味では社会や人生もそういう場で、万博もそういう場でした。
前田:それが万博から1年経って、新たな一歩になることが面白いですよね、アートって自分の中ですぐに変わるものではなくて、ゆっくり変わるもの、効いてくるものってありますよね。今回の公演で、劇場に一堂に会した人たちが、知り合って、何かのパワーになる。クラゲ館でやったこと、味わったことをどう劇場に持ち込むのか。その第一歩がこの公演になると思います。
(終わり)
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