カサハラ
「お疲れ様です!カサハラです!」
ストレッチレディ
「カサハラサン、ドウシマシタ?」
カサハラ
「指定された集合場所に到着したのですが・・時間になっても誰もこないんです・・」
ストレッチレディ
「ホントウデスカ!?制作陣モ、他のキャストもデスカ!?」
この日の撮影は、僕ともう一人
男性がキャスティングされていた。
カサハラ
「そうなんです!制作っぽい人も、もう一人のキャストの人も、誰も来ないんです・・僕、集合場所を間違えてしまったかもしれません・・・」
ストレッチレディ
「ワカリマシタ、至急制作陣にコチラカラ連絡を入れマスノデ、カサハラさんはソノママ待機シテイテクダサイ!」
カサハラ
「わかりました・・す、すみません・・」
電話越しとは言え、
あんなに慌てているストレッチレディさんは初めて。
通話が終了すると、僕はその場に膝から崩れ落ちた。
「(終わった・・・短い役者人生だった・・)」
もはや、始まる前に終わった、
と言っても過言ではない。
僕は、スマホを握りしめながら
ストレッチレディさんからの返答を待った。
すると・・
「あのう・・」
地面にうずくまっている僕に対して
誰かが声をかけてきた。
僕の只ならぬ様子を見て
急病かと心配してくれたのかもしれない。
カサハラ
「あ、すみません・・大丈夫です、ただ絶望していただけです」
???
「え?あ、いえ・・ここって、今日の撮影の集合場所であってますかね?」
カサハラ
「え?」
???
「あ、私、今日撮影に参加させていただく、”TD”と申します」
カサハラ
「え?撮影に参加!?」
TDさん
「あ、すみません!間違えました!スタッフさんかと思って声をかけてしまいました・・!!」
カサハラ
「え、あ、いえ・・!僕も今日、撮影に参加するカサハラと言います・・」
TDさん
「あ、じゃあ、もう一人のキャストさんですか!?」
カサハラ
「そ、そうです!」
・
・
・
2人
「よかった~!!!」
結論から言うと
僕が待機していた場所は間違ってはいなかったのだ。
一緒に出演するもう一人のキャストの”TDさん”も
駒沢公園に訪れるのはこの日が初めてだったらしく・・
道に迷って集合時間に遅れてしまい
かなり焦っていたとのこと。
そして・・
その直後に、ストレッチレディさんから着信があり
制作陣は渋滞に巻き込まれ、もう少し到着が遅れるとのこと。
なんとか、僕の役者人生は
ここで終わりを告げずにすんだのだった。