演出家
「はい、では『調べてきたこと』の発表は、これで終わります。」
この日、発表を当てられた“3人”は、
みな一様に充実した表情をしている。
それもそのはず、その3人は・・
数少ない「チャンス」をモノにできたから。
そして、僕はと言うと・・・
結局最終日も
“指名されることはなかった”のである。
「なんでや!!!電車の中であんなにいろいろ考えてきたのに・・・
何でこうもうまく行かないんだ・・」
準備すればするほど空回りしてしまう現状を
僕は嘆かずにはいられなかった。
「でも、まだ終わってない・・
絶対に諦めてたまるモノか・・」
ポキリと折れてしまいそうな心を、
もう一度支え直し・・
僕は残された”審査”に
すべてを賭けて挑むことに気持ちを切り替えた。
演出家
「では、次の審査は、昨日話した通り、ペアになった相手の「演技」をしてもらいます。まずは、昨日のペアと組んで座ってください。」
きたか・・。
そう、次の審査は
2日目の最後に「事前に伝えられていた」もの。
2人一組になって、20分間コミュニケーションを取り、
相手の癖や特徴を把握し、それを「演じる」というもの。
しかし・・・
その審査内容の全貌は、
「20分間のコミュニケーション」が
終わった後に発表されたため・・・
僕は全くと言っていいほど、
相手(ヒノ君)の癖や特徴を・・
把握することができなかったのである。
しかも・・
この審査のキモは、演技終了後に
ペアの「相手」が
その演技を評価するというところ。
ここで見当違いな演技をして相手に
「全然違う」だなんて言われたら・・・
その評価がそのまま
演出家の評価となってしまう。
「なんて難易度の高い演技審査なんだ・・」
僕は正直、
あの演出家のことだから
前日に「20分間コミュニケーション」を取らせながらも、
最終日に「やらない」という展開も
あわよくばありえるのではないかと期待していたが・・
この審査は「予告通り」
行われることとなった。
もうこうなったら、
この状況を切り抜ける方法は
たった一つ・・・
ヒノ君に、
ナチュラルに共謀を仕掛けるしかない・・!!