ここまで挑戦してきた
劇団のオーディション内容はどこも
”歌唱・ダンス審査”がメイン。
審査内容に”演技”が
含まれることすら稀なモノで・・
子ども向けにお芝居をする上でどれほど
”歌とダンス”が重要かと、思い知らされてきた。
そして、その度、歌・ダンス(特に)に
苦手意識を持っていた僕にとっては・・
まさに暗中模索、五里霧中。
何をどうすれば
合格できるのか全く掴めない状態であった。
と言うさなか・・・
”演技のみ”という
今回の審査はまさに千載一遇のチャンス。
「(これを逃したら・・・もう次はないかもしれない・・!!)」
事務所から送られてきたメールの中には
審査内容と一緒に、台本のデータが添付されていた。
ファイルを開いてみると、中には”子ども向け作品”の
1ページ分だけが切り取られたデータが入っていた。
その台本1ページの内容はと言うと・・
おそらく主人公と思われる男の子が
”何かに大きく思い悩んでいる”
という状況の
一人芝居のシーンが描かれていた。
その男の子は・・まるで・・・
僕のようだ・・
真っ暗な闇の中で
ひとりもがき苦しんでいる。
気持ちは前のめりになっていても
現状を打破することが出来ない・・・
まさに、”今”の僕のようだった。
「(これは、何かの運命かもしれない・・・)」
僕はアパートを飛び出して、
近くのコンビニで台本のデータを一枚だけプリントアウトし・・
その日は夜遅くまで、じっくりと読み込んだ。