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拝啓、Nさん。もう帰ってもいいですか?



これまでの“オーディション”に関して、
うまく収めてきた「成功体験」も


今回ばかりは、
“無理ゲー”となった。






そもそも、

演技の勉強だって一切したことないのに、

いきなり「ガチの演技力」が試される
舞台のオーディションに挑むこと自体・・・


到底、無理な話である。



おそらく、


『応募数が絶対に少ない』

『フリー』限定



という不誠実な条件が見事に揃い
自信に満ち溢れたまま挑んだところで・・


「演技力」という
一番重要な部分が欠落している僕が



そもそもオーディションに
合格するはずがない。





どんなに人数が少なくたって、
その中でもちゃんと「演技力のある人」が、
合格するに違いないからだ。




それに・・


これはもう、
“遊びではない”のだ。




「舞台」とは


お客様から、
“貴重な時間とチケット代”をいただいて興行される

言い訳のできない
「プロフェッショナルの現場」



出演者のみなさんも、
第一線で活躍中の「超一流」ばかり。



そんな中に「演技未経験」

「何者でもない男」

混ざり込むことなんて・・・


不可能なのだ。


いや・・



絶対に混ざり込んでは、いけないのだ。




逆転の一手



でも・・


もはやそんなことは、
考えていられない。


僕には、もう
“後がない”のだから。






この“舞台のオーディション”以外に、
未だ書類通過の連絡はない。



このオーディションが
ダメになったら・・


また、
あの「何もない」日々に戻ってしまう。



そして・・


“Nさんの期待に応えたい”


という“心の支え”にしていたものも・・
きっと消えてなくなってしまうだろう。





もう、僕にはこの
“舞台のオーディション”に賭けるしかないのだ。





今、僕にできることは何か?



他のライバルたちにはない
“武器”は何かないか?





僕は、長い列に並びながら、
考えて、考えて、考えまくった。




もう、時間がない。



会場の中まで
列は進んできた。



審査員の顔が見えてくる。



参加者が順番に
自己PRをする声も聞こえてくる。



もう、時間がない。






自分にできること・・


他の人にはできない・・


自分にしかできないこと・・













「あ・・・




確か“アレ”があったはず!!






僕は背負っていた
リュックのジップを下げて



おもむろに
中に手を突っ込んだ。


中を漁ってみると
リュックの奥底に眠っていた


四角くて固い“あるモノ”が、


僕の指先に触れた。




「あった!
これを使えば・・・



もしかしたら、逆転の一手になるかもしれない・・・!




それは・・


誰もが一度は手にして
遊んだことのある“モノ”。



しかし、それは・・


「舞台」にも、「演技」にも
まったく関係のない“モノ”。



そんな“モノ”が・・



このあときっと
“奇跡”を起こしてくれるはずだと・・





僕は祈ることしか、できなかった。



つづく・・・




P.S.

今回のコラムのボリューム、いつもの3割増しぐらいになっちゃいました。汗
本当は2次審査の内容にまでたどり着く予定だったんですけど・・全然、届かず(笑)


次回!


不誠実な自信も見事に打ち砕かれたカサハラ青年。この”舞台のオーディション”がダメになったら、もう後はない・・まさに背水の陣。自分にしかできないこと、他の人にはできないこと・・・自分の番が回ってくる直前に思いついたのは、誰もが一度は遊んだことがある”モノ”を使った特技の披露であった。それは、カサハラ青年の大学時代に大きく関係するモノであり、このオーディション時にまだリュックに入っていたのはまさに”奇跡”としか言いようがなかったのである・・・


お楽しみに~!!


カサハラケント


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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。

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