完全ヤンキー
「それはな、”最高の演技をして、見てくれるひとに心から楽しんでもらう”ことや」
カサハラ
「心から楽しんでもらうこと・・・」
完全ヤンキー
「まぁ、これは当然のことやし、前にもケントに話したかもしれへんけどな。さっきの”個人的なチャンス”を掴むためにいろいろ考えることも、もちろん必要なことやけど」
カサハラ
「はい」
完全ヤンキー
「俺ら役者が作る舞台、エンターテイメントってのは、”誰のため”にあるものやと思う?」
カサハラ
「えーっと・・それは・・お客さまのため、ですよね・・?」
完全ヤンキー
「そう!すべては見に来てくれる”お客様のため”にあるべきなんや」
カサハラ
「・・・・」
完全ヤンキー
「ケント。今、ケントはどんな感じや?」
カサハラ
「え?」
完全ヤンキー
「昨日のこと、チャンス逃してしまったこと、に完全に引っ張られてるよな?」
カサハラ
「そ、そうですね・・・」
完全ヤンキー
「そんな状態のまま、舞台に上がって良いと思うか?」
カサハラ
「いや、それは・・・見に来てくれる方に、失礼です・・」
完全ヤンキー
「そうや。それをちゃんと分かることが大事や。俺やって、昨日うまくチャンスを掴めへんかったのは悔いが残る。けどな、そんなこと見に来てくれるお客様には全然関係あらへんことや。ちゃんと気持ち切り替えて、今日の初日の公演を見に来てくれるお客様に、最高の芝居をお届けできるように、最善尽くすだけや」
カサハラ
「・・・そうですね・・・ありがとうございます・・!!」
完全ヤンキー
「よし、ほなステージ上と客席が解放されるまでは、ここ(狭い控え場所)でストレッチでもしておこか~」
カサハラ
「え?まだステージ上でウォーミングアップできないんですか?」
完全ヤンキー
「せやで!今日は”本番”なんや。今スタッフさんたちが急ピッチでステージ上や客席を”本番仕様”整えてくれてるんや~」
カサハラ
「そっか・・今日って、”本番”なんですよね・・なんか、やっと少しずつ実感が湧いてきて・・・手足の震えが・・」
完全ヤンキー
「やっと、実感わいてきたんか(笑)」