熱海の浜辺に来てから
気がつけば数時間経っていた。
辺りはだんだんと暗くなり・・・
回答のリミットも迫ってくる。
”今日中”の返答とは言っても・・
そんなに夜遅くまで引き延ばすことはできない。
オファーしてくれたプロデューサーさんは
まだかまだかと回答を待っているに違いないからだ。
カサハラ
「(よし・・、社長に伝えよう)」
僕は、スマホを取り出して・・
社長に電話をかけた。
カサハラ
「社長、お疲れ様です!」
社長
「もしもし、カサハラか?」
カサハラ
「はい、コメディ舞台の出演オファーの件・・・どうするか決めました」
社長
「そうか。で、どうするんだ?」
カサハラ
「出演オファーですが・・・・」
社長
「うん」
カサハラ
「・・・・・・・受けさせていただきます」
悩み切った後の・・・
大きな決断だった。
この先どうなるかなんて
僕にはわからない。
このコメディ舞台を
経験したからって・・・・
僕の追求したい”究極のリアル演技”に
弊害が出るかなんてわからない。
1年間の役者修行だって
僕にとって本当に大切な経験になった。
なんだって、経験することで
マイナスになることなんてないはずなんだ。
カサハラ
「(これまでだって、いろんなことに挑戦して続けてきて、今の僕があるんだ)」
全部、自分次第なんだ。
社長
「そうか・・オファーを受けるんだな」
カサハラ
「はい。挑戦してきます・・!」
社長
「わかった。カサハラにとって悔いのないよう、頑張ってきなさい」
カサハラ
「・・・はい・・ありがとうございます・・!」
なんだろう、社長の言葉にいつものような
”重み”というか”静かな威圧”と言うものが、
この電話口からは感じ取れなかった。