稽古終了後・・
出演者のみなさんは
着替えを済ませると
「おつかれさまで~す」
と、おのおの帰路について行った。
結局、この日の稽古では
“遺族たち”のシーンの稽古が
行われなかっただけではなく
前日のように“代役”として
お芝居に参加することもなかったので・・
ずっと稽古場の隅で
座りながら“見ている”だけに終わってしまった。
分かっている。
“見ているだけ”でも
本当に勉強になるし・・
気になった部分や、
感銘を受けた部分などは
台本の隅にペンでメモして
少しでも自分の
演技の参考にできないかと
集中して
稽古自体には臨んでいた。
「まぁ、今日は人数が多かったし・・
昨日みたいに少ない日には、きっと“遺族たち”の稽古にも時間を取ってくれるはず・・・」
そう思いながら、
僕は着替えて
稽古場を出ようとしたとき・・・
“あの人”が
声を掛けてきた。
「ケント~!飯でもいこか~!」
完全ヤンキーだ。
僕は終電を逃して散々な目に合った
昨夜の“悪夢”が蘇った。
カサハラ
「いえ、今日は大丈夫です」
完全ヤンキー
「なんや?昨日のこと根に持ってるんか?」
カサハラ
「はい、そうです」
完全ヤンキー
「まぁ、今日は軽く飯食うだけやから、そんなに遅くまでかからへん。安心せえ~!それに、稽古場じゃあんまり会話もできひんから、少し話でもしよや~」
カサハラ
「・・・わかりました。僕もちょっと聞いてみたいことあるんで・・
『 す ・ こ ・ し ・ だ ・ け 』 ご飯いきましょう」
完全ヤンキー
「よっしゃ~!ほないこか~!」
という訳で、
この日の稽古後も
完全ヤンキーに連れられて
僕は新宿の飲食街に
向かうこととなった。