「テレビに出る人」になりたい
という夢だけを持ち、
幾多の困難に直面してきたカサハラ青年。
ずっと、本当にずっと、
”漠然としたまま”の夢だったが、
カサハラ青年は
いつどんな時も諦めることはしなかった。
ただただ、諦めることはしなかった。
必ず、いつか上手くいくはずだと、
ただただ漠然と自分を信じ続けた先に・・・
ついに、カサハラ青年は
「舞台出演」という
オーディションの合格を勝ち取れたのだ。
夢へと続くスタートラインに
立つことが出来たのであった。
「なんでや・・」
そう漏らしたヒノ君の一言が・・
異様に僕は気になった。
まぁ、僕ら
オーディション組5人は
今日が稽古初日なのだから
”見学”だけと言われてもそりゃ・・
納得はいく。
むしろ僕の場合は
「よっしゃ!今日は見学だけだから、気軽に過ごせる!」
と内心、小躍りしてしまっていた。
他のオーディション組も、
僕と同じように少しほっとした表情をしたのを・・
僕は見逃さない。
しかし、だ。
ヒノ君は、その処遇に対し、
あからさまに不満を漏らしていた。
それほどまでに
演技というものが好きなのか・・
それほどまでに
”追求”したいものだからこそ・・
初日や何やと関係なしに、
すぐに稽古に参加したかったのか・・
ヒノ君ほどの”本物の役者”ならば、
異論なしにそう思うかもしれない。
しかし・・・
それとは全く異なるような、
ヒノ君から滲み出る”違和感”に・・
僕は不安を感じずにはいられなかったのだ。