カサハラ
「(う、嘘だろ・・この部屋のどこで撮影をするってんだ・・!?)」
そう口から出かかった言葉を
ぐっと飲み込んだ。
昔のカメラマンさん
「ちょっと、スタジオの用意するから、待ってて。あ、荷物はテキトーに置いて、冷蔵庫から好きな飲み物とって飲んでいいから」
カサハラ
「え、あ、はい・・ありがとうございます・・」
僕はとりあえず言われるがまま、荷物を置き、
冷蔵庫の中からペットボトルのお茶を拝借した。
すると、昔ながらのカメラマンさんは
慣れた手つきで、部屋の奥のテーブルや荷物をどんどんどかして・・
あっという間に撮影できそうなスペースを作り上げた。
と言っても
たたみ2畳くらいのスペースだ。
カサハラ
「(撮影って・・こんな狭いスペースでできるものなのか・・?)」
僕はだんだんと不安になってきた。
すると・・・
昔のカメラマンさん
「カサハラ君だっけ?」
カサハラ
「あ、はい」
昔のカメラマンさん
「今日はプロフィール写真の撮影でいいんだよね?」
カサハラ
「あ、はい、そうです。お願いします」
昔のカメラマンさん
「こういう撮影は初めて?」
カサハラ
「こういう撮影・・と言いますと?」
プロフィール写真の撮影のことか?
それとも・・
こういう“アパートの一室”での撮影のことか?
とりあえず、どっちも初めてではある。
昔のカメラマンさん
「一般的なスタジオじゃなくて、こういう部屋での撮影は初めて?」
カサハラ
「あ・・こういう場所も初めてですし、プロフィール写真を撮ってもらうのも初めてです」
昔のカメラマンさん
「あ、そうなの!?じゃあ、カサハラ君の初めての相手は、僕って訳だ」
カサハラ
「え、うっ、あ、はい・・」
昔のカメラマンさん
「ごめんごめん、今の言い方は冗談だよ。じゃあ、今日は良い写真を取ろうね~」