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鼓童村のケヤキの木

『ワン・アース・ツアー2025』春のツアーを終えました

柏崎市での公演も、満員のお客様をお迎えでき、大変嬉しく思っております
ありがとうございました
日が空いてしまいましたが、前回の掲載でお話をした「セットリスト」について、そこから少し踏み込んだ演目についてをお話していきます
今回の『ワン・アース・ツアー2025』にも、3パターンの楽曲がそれぞれ並んでいますが、
出演するメンバーが作曲した楽曲も登場します


・佐渡の芸能 “鬼太鼓”を取材した踊り演目「とよむる」 踊り構成:三浦康暉、作曲:前田順康
・静岡県南伊豆の祭り太鼓を取り入れた「からどんどろ」 作曲:三枝晴太
・インドネシアの楽器 “ガムラン”を取り入れた楽曲「Oiseau」 作曲:鶴見龍馬
・昨年の浅草公演で生まれた「Wangan」 作曲:北林玲央
・大太鼓の前奏曲となる「迫」 作曲:三枝晴太


以前から鼓童の中で、作曲をするメンバーの顔ぶれが固定されてしまわないといいなと感じていたので、『ワン・アース・ツアー2025』を構成するにあたっては、できるだけバラエティ豊かなメンバーに作曲をお願いしてみました

今回はぼくからシーンのイメージを伝えて作曲をしてもらう流れがありましたが、今後はコンペなど、いろいろな方法でより広い振り幅の楽曲が舞台に並ぶとよいなと考えています

稽古場で楽曲を作り上げていく過程も、その人の人柄や感性が現れ、とても好きな時間です
どのような背景でそれぞれの楽曲が生まれてきたのか、いつも気になっています

今回の舞台に楽曲を提供してくれたメンバーに次のような質問を送ってみました
どのような返事がくるのか、ぼくも楽しみです

鼓童の楽曲はその成り立ちを大きく3つに分けることができます

1)日本の各地に残る芸能やお囃子を取材し、それを元にアレンジされた楽曲
→「屋台囃子」「三宅」など
2)外部の作曲家に依頼をして作られる楽曲
→「モノクローム」「千里馬」
3)鼓童のメンバーが作曲をした演目

「とよむる」踊り構成の康暉(こうき)さんからのお返事

Q1.あなたのお名前を教えてください。
 三浦康暉(みうら こうき)です!

Photo by Takashi Okamoto

Q2.「ワン・アース・ツアー2025」でのあなたのポジションはなんだと思いますか?
 足腰酷使の褌マンです!!

Q3.この楽曲は本作の中でどのようなポジションにあると思いますか?
 序盤の曲なので、お客様を盛り上げ、鼓童の世界により引き込む様なポジションの曲になれば嬉しいです。

Q4.この楽曲を作っているときに触れていたもの(音楽や美術、芸能や小説など、、)はありますか?それはなんですか?
 佐渡各地の祭りに足を運び、その土地に根付く芸能を肌で感じました。
また鬼太鼓を実際にやっている方に直接教えていただきました。


Q5.楽曲の気に入っているポイントはなんですか?
 音楽がとにかく聞いてて楽しい!
そして鬼太鼓がかっこいい!


Q6.演奏するみんなへ伝えたいことはありますか?
 実際の祭りの様な雰囲気プラス、自身が楽しんで演奏してもらえればと思います!

Q7.これから先、この楽曲がどのように育っていくことを願いますか?
 芸能って取っ付きにくいとか・分かりにくいという部分で敬遠しちゃう方もいると思うのですが、そういう方々に「面白そう!楽しそう!」などと感じていただけたら嬉しいです。

演目:とよむる  Photo by Takashi Okamoto

「Wangan」作曲の玲央(れお)さんからのお返事

今年6月の浅草公演にて、続編の「WanganⅡ」の作曲もお願いしました
Q1.あなたのお名前を教えてください。
 北林 玲央(きたばやし れお)です。

Photo by Takashi Okamoto

Q2.「ワン・アース・ツアー2025」でのあなたのポジションはなんだと思いますか?
 どちらかというとFW(フォワード)寄りです。

Q3.この楽曲は本作の中でどのようなポジションにあると思いますか?
 華やかでイケイケ!!
クライマックスに向けて勢いをつけるポジションかなと思います。


Q4.この楽曲を作っているときに触れていたもの(音楽や美術、芸能や小説など、、)はありますか?それはなんですか?
 ひたすら太鼓を叩き、今まで吸収してきた自分の中にあるものを絞り出しました!

Q5.楽曲の気に入っているポイントはなんですか?
 11拍子独特の拍子感から出てくる疾走感です!

Q6.演奏するみんなへ伝えたいことはありますか?
 その日に出てくる雰囲気を楽しみましょう!!

Q7.これから先、この楽曲がどのように育っていくことを願いますか?
 11拍子の可能性をもっともっと広げていきたいです!

演目:Wangan  Photo by Takashi Okamoto

「Oiseau」(読み:オワゾ、フランス語で鳥を意味します)を作曲してくれた龍馬(りょうま)さんからのお返事

Q1.あなたのお名前を教えてください。
 鶴見龍馬(つるみ りょうま)です。

Photo by Takashi Okamoto

Q2.「ワン・アース・ツアー2025」でのあなたのポジションはなんだと思いますか?
 ジャンガラ・手平・当たり鉦・ボナンなど、鼓童では鳴物(なりもの)と呼ばれる様な
金属楽器達を多く扱ってる人です。


Q3.この楽曲は本作の中でどのようなポジションにあると思いますか?
 舞台上の空気感を一時的に変えるような演目かと思います。

Q4.この楽曲を作っているときに触れていたもの(音楽や美術、芸能や小説など、、)はありますか?それはなんですか?
 ひたすらボナンを打ってました。
※ボナンは上記写真で龍馬さんが演奏しているインドネシアの楽器です。

Q5.楽曲の気に入っているポイントはなんですか?
 後半ガラッと違うフレーズに行った後にまた元のリフレイン(繰り返し)に戻ってくる所です。

Q6.演奏するみんなへ伝えたいことはありますか?
 ボナンの音を聞きながら気持ちよく演奏してもらえればと思います。

Q7.これから先、この楽曲がどのように育っていくことを願いますか?
 明確に記憶に残らなくても、ふとした時に「あれ、このフレーズ感なんだったかな?」と
頭のどこかに残る曲になったらいいですね。

演目:Oiseau(オワゾ)  Photo by Takashi Okamoto

「迫」を作曲した晴太(せいた)からのお返事

Q1.あなたのお名前を教えてください。
 三枝晴太(さえぐさ せいた)という名前です!

Photo by Takashi Okamoto

Q2.「ワン・アース・ツアー2025」でのあなたのポジションはなんだと思いますか?
 お弁当を持ってきて、稽古の合間に四六時中食べる係です!

Q3.この楽曲は本作の中でどのようなポジションにあると思いますか?
 大太鼓自体の出現、接近が曲想とリンクして、音圧的にも、ビジュアル的にも迫力あるシーンとなっています!
演奏者の間に横たわる強烈な緊張感も一つ魅力だと思っています。


Q4.この楽曲を作っているときに触れていたもの(音楽や美術、芸能や小説など、、)はありますか?それはなんですか?
 俳句、です。
五七五、という日本人の心の中にある心地よいビート感にヒントをもらって、
出来上がった音楽的な構造は複合拍子の難曲となりましたが、
演奏する上でも聴く上でも、肌に馴染むといいますか、心地よく聴くことのできる出来に仕上がりました。


Q5.楽曲の気に入っているポイントはなんですか?
 この曲は太鼓の打面の中央と、端をかなり極端に打ち分けることで音程感を発生させ、
実際の人数以上の規模感、音像の立体感を作り出すことができました!

1人の人間が、「和太鼓という楽器で2つの音楽的な役割を担当する」
というような発想は意外にこれまでなかったのではないかと、鼻息が荒くなっております!!
(中太鼓/アルト、テノール 平胴/バリトン、テノール 締/ソプラノ)


Q6.演奏するみんなへ伝えたいことはありますか?
 弱音も強打も、ある程度自分本位で、と伝えたいです。
隣の演奏者や空間全体をイメージしたサウンドを届けることが通常ですが、
この楽曲では、「自分にも聞こえるかどうかギリギリの弱音」や、「自分の音しか聞こえなくなってしまうような強打」、
そして限られた視野に没入していくことによる異質な集中状態を楽しんで欲しいんです!

Q7.これから先、この楽曲がどのように育っていくことを願いますか?
 「迫」というタイトルですが、飽き足らず、
曲の魂には「-鬼気- 迫」と、進化していってほしいです!

鼓童が太鼓の可能性を追究し続ける、考え続ける、その闘いに一石を投じることができれば…

演目:迫  Photo by Takashi Okamoto

【作曲とは...】自分との違いや共感すること

みんなからのお返事を読んでみると、
楽曲の核となる楽器にとにかく触れて、叩く中で組み立てる人が多いですね
実際の稽古も、テーマとなるリズムや、メインのモチーフに肉付けをしていく流れが多かったように感じます
ぼくはアンサンブルの総合的な音が浮かんできて、そこから構成を考えたり、組み立てることがほとんどなので、
異なるアプローチでの稽古やクリエイションは新鮮でした

ぼくとしては、どんな楽曲でもやはり「聴いてくれる人がいること」を意識したいなと日頃から思っています
何度でも聴ける楽曲、体調によって聴こえ方や感じ方が変化する楽曲、
そんなことをひとつのポイントにしています

そんな外向きに作用する側面と、もうひとつ内向きに作用する側面とがあるとも考えていて、
鼓童でなにかひとつの楽曲を演奏すると、それぞれの考え方やアンサンブルのなかでの関係性が現れてきます
「この人ならこういうアプローチでくるだろうな、、」と、パートを担当してもらう人のことを想像して楽曲を作りますが、
その反対で、自分の想像にはなかった理解やアプローチが飛び出してくることもおもしろく、いろいろな人の感性に触れて、思いがけないところへ着地することも楽しみのひとつです
解釈の幅が広く、演奏する人物の人柄がよく現れるような楽曲を、もっと多く作っていきたいです

ご来場のみなさんの目に触れ、耳に入り、楽曲は、作品は育っていきます
発表がゴールではなく、稽古のなかで、上演することのなかで温め続けることも大切な作曲です

8月に佐渡で開催しますアース・セレブレーションでは、3日間それぞれ異なる構成でのコンサートをお届けします
2日目、3日目には国内外からのゲストもお招きし、様々な楽曲が演奏されます
様々な趣向の楽曲たちを味わいに、ぜひ佐渡に足を運んでいただけたら嬉しいです

そして、9月からは『ワン・アース・ツアー2025』が再開いたします
また多くのみなさんの元に楽曲、作品をお届けできることを楽しみにしております

2025.07.24
佐渡島より 前田順康

鼓童村 稽古場の様子 Photo by Erika Ueda

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鼓童 -KODO-
太鼓芸能集団 鼓童. 新潟県佐渡市を拠点とし活動を世界へ広げる。 太鼓を中心とした伝統的な音楽芸能に無限の可能性を見いだし、現代への再創造を試みる集団。 1981年、ベルリン芸術祭でデビュー。以来世界50以上の国と地域で7,000回を超える公演を行う。 劇場公演の他、世界の主要な国際芸術祭等へ多数参加し、近年では、初音ミク、MIYAVIらとの共演、オンラインゲーム「原神」の音楽に参加するなど活動の幅を広げている。2023年、令和5年度文化庁長官表彰。