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【佐渡を世界へ】受け継がれる伝統演目!セットリストはどう決まる?鼓童の公演ができるまで #2

鼓童 -KODO-

2025.05.03

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【鼓童コラム】太鼓芸能集団 鼓童「ワン・アース・ツアー2025」の演出を務める前田順康が、6月1日柏崎公演までの裏側を語ります!3月いっぱい開催していた北米ツアーの思い出とあわせてお届けします🎶

みなさん、こんにちは
ぼくたちの北米ツアーも終盤に入りました

現地の美味しいごはんを教えてくれるアメリカ出身の太陽 [Photo by yasu]

現在、カナダ3都市での公演を終え、再びアメリカへ戻るところです
国境を越え、街の雰囲気が変わり、
看板やメニューでフランス語が目に入ったりして
また新鮮な気持ちを味わいました

初めてのカナダ・オタワで啓と散歩した休日 [Photo by yasu]

公演を左右する「演目」と「セットリスト」

さて、今回は舞台でお届けする「演目」と、
それらから成る「セットリスト」についてお話をします
これらは、公演のカラーを大きく左右する要素だと思っています
鼓童の作品には全編新曲を書き下ろして構成される新作
鼓童が長年上演してきた演目を軸にした「クラシック」な演出の舞台があります
今年の『ワン・アース・ツアー2025』は後者の舞台になります
千里馬、三宅、大太鼓、屋台囃子
これらの演目は、研修生の頃から取り組んでいくものでもあるため、
鼓童では「基本演目」とも呼ばれています
それらの演目を繋いでゆく楽曲のいくつかを、
今回の出演メンバーに作曲をしてもらっています
セットリストは、曲のつながりやギャップ、
温度感や楽器編成など、多くの要素が絡み合うため、
一番自分の好みが反映されるポイントだなと思っています
趣味趣向と言ったらいいでしょうか...

北米ツアー中の合間にワンアースツアーの練習 [Photo by yasu]

公演まで期間がある場合、何度かの変更をしていく前提で、
大枠で3~5パターンほどを組んでみるようにしています
キャストが決定した段階で、
出演メンバーの顔ぶれに合わせて
セットリスト全体の見直しをします
具体的に演目にメンバーを当て込んだり、
このメンバーなら…と演目を検討し直します
その変更版でも、さまざまな選択肢を考え、さらに3パターンほど組みます
稽古がスタートするまでに、
メンバーの新しい魅力が見えてきたり、
自分自身も多くのインプットがあるため、その都度見直しをします
公演が迫ってくると、舞台の転換や着替えなども含めて具体的に考えはじめるので、
ファーストインプレッションからどんどんと離れていきます
もちろんそれ自体がすっかり悪いことではないと思うのですが、
付け焼き刃ではなく、「もともと何をやりたかったのか」というところからブレない選択をしていくために、
過去の自分が考えていたたくさんの選択肢を残しておき、見返すようにしています

公演するメンバーの顔ぶれによってセットリストも変わるとは驚きです!
原点に立ち返りながらも、何度もブラッシュアップされてセットリストができあがるのですね...!

隙間時間で、楽曲の手合わせをしたり踊りの振り付けをしたり... [Photo by yasu]

セットリストが出来上がっていくなかで

セットリストが出来上がっていくなかで、
自分が考えていることを整理してみました
そうすると、
単に聴き良い、見やすいという観点ではなく、
循環のようなコンセプトを無意識に持っているような気がしてきました
もう少し深掘りしてみると、
四季の巡り、それも佐渡で過ごす中で感じている季節の移ろいが、
作品の流れに落とし込まれていることを発見しました
これからも直接的な表現ではなく、
ぼくが感じる佐渡の四季と舞台での出来事が柔らかくリンクし、
その色や香りが時より表出してくるような仕立てにするつもりです
佐渡に暮らすぼくたちの頭や身体の中には佐渡が入り込んできます
なにか創作をするときに、その前提を外すことはできないし、
反対に強い主観で佐渡を再現しようとすることも難しいと思っています
鼓童のみんなから自然とにじみ出てくる佐渡のエッセンスが、ぼくは好きです
そんな空気を全国へお届けすることができるのも
鼓童で舞台をやることのおもしろさのひとつだと思っています
今回生まれる新曲たちからも、それぞれの中にある佐渡から受け取った色彩を感じていただけたら幸いです

自然豊かな佐渡を拠点にしているからこそ、鼓童さんの唯一無二の魅力は生まれるのですね!

北米ツアー中ドライバーをしてくれたドニーが撮ってくれた [Photo by Donnie Keeton]

伝統の「基本演目」への思い

最近、長年演奏をしている「基本演目」への思いも
自分の中で変わってきました
「―なにか新しいチャレンジをするためには、
その都度足元を見つめ直し、固め直すことが要るのではないか―」
その 見つめ直す ということは、ただ反芻することではなく、
キャリアを重ねた自分に起きる 捉え方の変化 を自覚し、
新たなアプローチを獲得する機会だと思っています

萌と蓮菜は編み物にハマる [Photo by yasu]

昨年でしょうか、
「しがむ」という言葉を知りました
関西(近畿地方)の方言で、噛み締めるという意味だそうです
長く演奏されている演目は、シンプルでありながら
それゆえにとても「しがめる」のだなと最近感じています
グルーヴの探究、身体遣いの研究など
自分がキャリアを重ねると、また新たに切り口が見つかり、
そこにみんなでトライをしていくことが、
次の創作のヒントや、その起点になっていきます
『ワン・アース・ツアー2025』を通して、
受け継がれてきた楽曲たちをもっともっと"しがんで"いきたいですし、
自分たち自身も"しがめる"演目を作り出していきたいと思っています

ドニーに帽子をプレゼントする蓮菜。お揃い。 [Photo by yasu]

さて、もうすぐ春
佐渡では春の祈願祭が島のあちこちで始まり、
土と植物の香りで充ちてきます
島開きを迎えた佐渡での稽古が、
いまから待ち遠しいです
みなさまと劇場でお会いできる日も近づいていますね
良い音と時間をお届けできるよう稽古に励んでまいります
2025.03.××
トロント ピアソン空港 F51ゲートより
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鼓童 -KODO-
太鼓芸能集団 鼓童. 新潟県佐渡市を拠点とし活動を世界へ広げる。 太鼓を中心とした伝統的な音楽芸能に無限の可能性を見いだし、現代への再創造を試みる集団。 1981年、ベルリン芸術祭でデビュー。以来世界50以上の国と地域で7,000回を超える公演を行う。 劇場公演の他、世界の主要な国際芸術祭等へ多数参加し、近年では、初音ミク、MIYAVIらとの共演、オンラインゲーム「原神」の音楽に参加するなど活動の幅を広げている。2023年、令和5年度文化庁長官表彰。

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