「運命の3日間」の
2日目を終えたカサハラ青年。
オーディションの最中は全くと言っていいほど、
評価も印象もアップすることはできなかったが・・
帰り際、タクシー待ちをしている
演出家とストレッチレディを偶然発見する。
「ここで何かしなければ終わる」
そう思ったカサハラ青年は、
咄嗟に演出家に話しかけ
「まだ”駅名”覚えています」
と、オーディション時には順番が回ってこなかった
「記憶力クイズ」の答えをなんと道端で披露した。
あっけにとられた演出家から
「やっぱり君面白いね」
と言ってもらえたカサハラ青年。
正攻法ではなかったが、
なんとか印象アップに成功するのであった・・・
遠くに消えてゆくタクシーの後ろ姿を・・
僕は、ただただ見つめていた。
「ふふふ、君やっぱり面白いね」
「君は何で、事務所に入ってないの?」
僕の脳内を反芻する。
演出家から放たれたその言葉に、
僕の感情は揺さぶられていた。
「これは、一体どう捉えていいのだろうか・・」
「まだ合格できる可能性は、残っているのか・・?」
「それとも、特に何の意味も持たない、あれは『ただの繋ぎの会話』だったのか・・?」
きっと、期待してはいけない。
でも・・
期待せずにはいられない・・・!!
事実、この2日間の審査は
散々なものだった。
”舞台のワークショップ”
と、言うものをよく知らず
私服のまま参加し
「印象の悪さ」を与え・・
“柔軟体操”で身体の固さを露呈すると
「帰っていいよ」と突き放される。
さらに、「即興演技」の審査や
「調べてきたもの」の発表に「記憶力ゲーム」も・・
2日間のワークショップでは、
見せ場を作ることも、高評価につながることも・・
僕は一切、
何も残すことができなかった。
「でも、ここまで来たら・・
もう自分を信じるしかない!」
演技力なんて、誰にもかなわない。
これまで経験してきた場数だって雲泥の差だ。
でも、そんなことはどうだっていい。
過去じゃないんだ。
未来なんだ。
できる。
きっと、できるぞ、カサハラケント。