「テレビに出る人」になりたい
という夢だけを持ち、
幾多の困難に直面してきたカサハラ青年。
ずっと、本当にずっと、
”漠然としたまま”の夢だったが、
カサハラ青年は
いつどんな時も諦めることはしなかった。
ただただ、諦めることはしなかった。
必ず、いつか上手くいくはずだと、
ただただ漠然と自分を信じ続けた先に・・・
ついに、
カサハラ青年は「舞台出演」という
オーディションの合格を勝ち取れたのだ。
夢へと続くスタートラインに
立つことが出来たのであった。
演出家
「では、今日の稽古を始めます。」
ついに、この瞬間・・
僕の役者としての
人生の幕は切って落とされた。
舞台の稽古とは、一体どんなものなのか。
これまでの様々なオーディションや
養成所時代のレッスンとは話が違う。
ここはプロの現場。
第一線で活躍中の
俳優さんやアイドルの方など・・
その一同が会したスタジオは
“稽古開始の合図”とともに、
異様な空気に包まれた。
演出家
「では、いつものシーンから始めます。
容疑者役の8人は準備してください。」
「いつものシーン?」
演出家の指示で、
容疑者役の8人はスタジオの中央に並べられた
パイプ椅子にゆっくりと腰を掛ける。
その中にはもちろん、
主演やヒロインの方も入っている。
そして、よく見てみると・・
「え、ストレッチレディも、容疑者役なの!?」
まさかの光景だった。
前日まで、
そして今日の稽古でも
スタッフさんとして参加していると
思われたストレッチレディは・・・
なんと今回の舞台の出演者だったのだ。
しかも・・・
メインの役者さんたちと同じ
「容疑者8人」の中の一人。
間違いなく重要なポジションだ。
でも、昨日まで見せつけられた
ポテンシャルを考えれば・・
この8人の中に、
ストレッチレディが組み込まれているのは・・
なんら違和感はない。
ということは・・
言い換えれば
この容疑者役の他の7人も、
少なくともストレッチレディと
同程度のポテンシャルを・・
いや、それ以上の未知なる実力を
兼ね揃えたメンバーなのだ。
僕は想像しただけで、鳥肌が立ってくる。
こんなメンツの中に、
ド素人の男が入り込んで本当にいいのか!?
このあと、
どんな形で稽古が進んでいき、
どのタイミングでその中に
放り込まれるのかと想像するだけで・・
僕は、全身の震えが止まらなかった。