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なんとかならなくなる



ストレッチレディに誘導されながら

僕たちオーディション組も入り口から劇場に入り
ロビーへ続く階段を上って行った。


いつもの稽古場では
階段を下りて”スタジオ”へと入っていた。


この2週間、その繰り返しだったからか
“階段を上って”劇場に入ることにすら、変な緊張感が体を走る。



「(完全にこの雰囲気に飲まれてしまっている・・・)」


自分でも意識できるくらい
身体がガチガチに固まってしまっているのが分かる。


「(こんな状態で、果たして大丈夫なのか・・・2日後に迎える本番・・ダメだ、想像しただけで吐きそうになる・・)」


過去にこれほどまで
緊張したことがあっただろうか・・


どこかいつも
なんとかなるだろう

という安易な気持ちを
持ち合わせながら僕は生きてきた。


小さい時からいつも
なんとかなってきた”。


遊びも勉強も、なんとかなって。

部活も受験もなんとかなって。


上京して、一人暮らしをはじめても
なんとかなって。

養成所での試練も困難も
最終的には、なんとかなって。


そして・・


この舞台のオーディションすらも、

なんとかなって。


でも・・


この舞台の
”稽古”が始まってから・・・


突如、変化が起こり始めた。


”なんとかならなく”なり出したのだ。


代役の稽古も、なんとかならない。

役作りも、なんとかならない。

起こる全てが、なんとかならない。


こんな不安定な
日常が続いたのはこれが初めて。


そんな状態のまま僕は今も
未知の世界へと足を踏み入れ続けている。



そして、不安になると・・

元居た場所に戻りたくなる。

安住の地で休みたくなる。


(お家に、帰りたい・・・)


情けないけれど
そんな思いがどんどん込み上げてくる。


そんな時だった。


完全ヤンキー
ケント、あれ見てみ


カサハラ
「え?」

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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。

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