舞台監督
「では、時間になりましたので、みなさんステージ上に集合してください!」
舞台監督のアナウンスで
時間通りにキャストの全員がステージ上に集まった。
とは言っても・・
集合時間の大体30分前からほぼ全キャストがステージ上や
客席の空いている場所でウォーミングアップをしていたので・・
すでに自然と集合は完了していた感じだった。
舞台監督
「では、これからBキャストのゲネプロを開始します!引き続き、怪我のないように宜しくお願いします!」
キャスト
「はい!」
舞台監督
「では、演出家からも何かあればお願いします!」
演出家
「特にありません」
舞台監督
「では、本番同様、このあとは客席側の通路を封鎖しますので、みなさん舞台裏で準備の方を宜しくお願いします!」
ステージ上から解散すると
おのおのBキャストのゲネプロに向けて準備を開始した。
この時、Aキャストに出演したダブルキャストの役者陣は
舞台裏が狭い目なため、客席でゲネプロを見学するよう指示も受けた様子だった。
僕もみなと舞台裏に向かい
オーディション組の控え場所で、衣装の黒スーツに着替えて
不自然にならない程度に顔全体に白塗りを施した。
「(ふう・・このあと人生を賭けた大勝負が始まるぞ・・・)」
Aキャストのゲネプロ時には
感じることのなかった緊張感がどんどんと襲ってくる。
そして、それは、僕だけではない。
オーディション組の控え場所だけが
異様な緊張感に包まれている。
そう、オーディション組のみなが、
このBキャストのゲネプロに人生を賭けているのだ。
僕は、完全ヤンキーの方を
チラッと覗き込んだ。
「(う、うおおお・・・)」
完全ヤンキー目は血走っており
誰かをあやめてもおかしくない程のソレをしていた。
「(だ、大丈夫かな・・?僕ら今までの関係性に戻れるかな・・)」
あれほどに優しく頼りになる完全ヤンキーは、
もう戻ってこないのではないか・・・
そう思わせるほどの鬼気迫る表情に
ただただ僕はビビり散らす他なかった。