演出家
「みんな集まった?」
5人
「はい!集まりました!」
演出家
「まずは、ゲネプロお疲れ様」
5人
「お疲れ様でした!」
演出家
「まぁ、いろいろ個人的な反省はあると思うけど、良い感じだから、本番もあの世界観を作り出してね」
5人
「は、はい!ありがとうございます!」
意外すぎてビックリした。
演出家に呼び出されて僕たちオーディション組は
“確実に何か怒られる”そう思っていたからだ。
僕なんかは、集中が切れたままお芝居をしていたし
確実に演出家には見抜かれていたと思っていたから・・・
演出家
「あ、あとね」
5人
「は、はい・・」
演出家
「君たちに伝えておきたいことがあってね」
5人
「な、なんでしょうか・・?」
演出家
「君たちは僕のオーディションで受かった役者ってことは、まだどこの芸能事務所にも所属していない訳だ」
5人
「は、はい・・・」
※この舞台のオーディションは、事務所に未所属の役者が参加条件だったからだ。(完全ヤンキーとヒノ君は特別)
演出家
「たぶん気づいているだろうけど、さっき客席でゲネプロを見学していたのは芸能事務所の関係者たちです」
4人
「はい」
カサハラ
「え?」
・・・そうだったの!?
演出家
「今回の主役の彼も、ヒロインの子も、ベテラン俳優の方も、誰もが知るような芸能事務所に所属しているでしょ?」
4人
「はい、大手の事務所です」
演出家
「君たちは、このチャンスを逃すほかない」
カサハラ
「・・・・え?」
演出家
「芝居でアピールして、事務所所属のチャンスを勝ち取ってください」
カサハラ
「事務所所属・・」
演出家
「関係者のみなさんがゆっくり芝居を観れるのは、あとは、2時間後のBキャストのゲネプロだけになります。本番が始まったら、客席はお客さんで埋め尽くされますからね」
5人
「・・・・」
演出家
「以上です。では、おのおの自由にゲネプロに向けて準備をしておいてください」
そう言うと演出家は
客席の扉から外へと消えていった。
心臓の鼓動が大きくなってゆくのが分かる。
それは、僕だけじゃない。
この場にいるオーディション組みんながそうだ。
そして、僕はチラッと完全ヤンキー方を見てみた。
すると・・・・
さっきまでの殺気に満ち溢れたオーラが
再び完全ヤンキーの身体全体を包み込んでいた。
つづく・・・