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所信表明










その後、

刑事のシーンの続きを
もう一度稽古した後・・


再度、”冒頭のト書き”のシーンから1回ずつ、
同じシーンの稽古を行い、この日の稽古は・・・


すべて終了となった



演出家
本日の稽古はこれで終了となります。明日も、同じ時間にここに集まってください。お疲れ様でした。




そう言うと、演出家はスッと立ち上がり、
スタジオの外に続く階段を上がり、夜の新宿の街へ消えていった。



キャストのみなさんもそれぞれ着替えを済ませると
「お疲れ様でした~」とバラバラに帰路へついていく。



僕も着替えて、スタジオの外へ出ると
お昼の13時から開始した稽古も、気が付けば21時。



あっという間に8時間がたっていた。


僕にとって、
人生初の舞台稽古は・・・


なんとか・・

なんとか・・・


乗り切ることが出来た。


とは言っても、
何一つ満足できるものではない。



役者としての心構えから、
「役」と向き合う姿勢

そして・・

まざまざと見せつけられる
他のキャストのみなさんのレベルの高さ。


正直、心も折れそうになった。


自分には無理かも、とも思った。


でも、


これが、僕が目指した道。


そんな弱音を吐いてはいられない。


誰にだって、どんな世界にだって、
壁にぶち当たる「初日」があるはずだ。




それが今日、僕に訪れただけ。


大切なのは”明日から”だ。



今日、肌で感じたモノを、
家に帰ってからしっかり体の中に・・


そして


心の中に落とし込んで。



明日、どれだけの準備をして
再び稽古に臨むことができるか



それが、重要だ。



それは、他者からの
印象を良くすることが目的ではない。


もちろん、
良い評価を受けることは大事である。


でも、それ以上に自分の中で
「この道でやっていく」と言う覚悟の印




所信表明




「決意」に「行動」が伴ってこそ。



本当のスタートなんだ。




カサハラ
「よし、早く帰って台本を読み込んで、しっかり”神谷椎太郎“像を作り上げていこう。そして、また代役が回ってきたときの為にも、自分以外の役も含めて、しっかり読み込んで来よう・・!」




と、思いながら
帰路へ向かおうとした・・・



その時だった。



カサハラ君~、このあと空いてる?



完全ヤンキーが声をかけてきた。


カサハラ
「え?あ、いや、帰って台本を読もうと思ってましたけど・・・」




完全ヤンキー
お、じゃあ、“終電までは空いてる”ってことやな?
よし、飲みに行こで~!




カサハラ
「え?いや、さすがに早く帰って・・・」




完全ヤンキー
大丈夫や~大丈夫や~!稽古初日を祝って少し乾杯するだけやから~




し、しつこい・・・



ただ、これから一緒に
”遺族たち”として・・・


作品を作り上げていく仲間。


無下に断るのは、
あまりよくないかもな・・・


カサハラ
「わ、分かりました。少しだけ行きましょう」



完全ヤンキー
よっしゃ!ほないこか~!・・・おっ!



と、ちょうどそこに、
スタジオのカギを閉め終わった


ヒノウエさんが通りかかった。


完全ヤンキー
ヒノウエさん~!ヒノウエさんも、これから一緒に飲みに行きまへん?



ヒノウエさん
あ、ボクはチョット・・・・



完全ヤンキー
なんや?このあと用事でもあるんですか??



ヒノウエさん
用事はナイデスケド・・・ボクは行けないんデス・・・



完全ヤンキー
へ?



ヒノウエさん
行っちゃいけないんデス・・・オ、お疲れ様でした!




そう言うと、ヒノウエさんは
小走りで駅の方へ去っていった。


完全ヤンキー
なんや~つれへん人やなぁ~。まぁええわ。ほな、2人で行こか~




そう言うと完全ヤンキーは
半ば強引に、僕の腕を引っ張りながら


近くの居酒屋へ入っていった。




そして、この日。




僕は、




”終電を逃す”という
過ちを犯してしまうこととなったのだ。






つづく・・・

P.S.


いやぁ~、稽古初日の内容だけで結構コラムの話数を使いましたね・・・汗
でも、それだけ濃ゆかった“初日”だったので、余すことなく書き連ねました・・!
ちなみに、“神谷椎太郎”という名前ですが、椎太郎(しいたろう)の“しい”は、遺族Cから
の名残です。笑


次回のコラムですが・・・・
番外編をお送りします


内容は・・・

最近、僕がとびきり驚いた
”とある出来事”のお話です・・・・!!


おそらく1話完結になると思いますが・・・
書いてみないと分からない・・・・・(^^;

(※2週に渡る可能性も大いにあります。笑)


という訳で、

第3章『職業:役者』の続きは
再来週以降の更新となりますが・・・


番外編も含めて
お楽しみに~!


カサハラケント

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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。