「コンコン」
と、叩く音が聞こえると、
扉の向こうからスッと顔が覗き込んできた。
「遺族たちのみなさん、10分休憩になりますので、稽古場にお戻りください。」
ストレッチレディからの
アナウンスだった。
僕ら5人は、
薄暗い更衣室から稽古場に戻り・・
おのおの休憩を取った。
休憩後の稽古は、
「刑事シーン」終了後からのスタート。
そう。
再び僕らは「容疑者役」の代役として
稽古に参加することになるのだ。
僕は、限られた10分という
短い休憩時間の中ではあったが・・
稽古場の片隅で台本を開いて、
頭を切り替えると・・・
今度は代役の
キャラクターの確認をする。
少し読んだだけでは、
その「キャラクター」の性格、
癖、特徴を掴むことは不可能だ。
しかし・・
カサハラ
「(少しでも、今できることを・・・)」
もっと必死に
ならなければならない。
これは、自分が選んだ道なのだ。
演技に対して
そして・・・
役者と言う職業に対して、
もっと本気にならなければならない。
この時、僕の中で、
少しずつ意識の
変化が生まれ始めてきたのだ。