「8人は、とある建物の、真っ暗な一室に、閉じ込められています。」
「うふわぁ!!!」
突如響き渡る、ドスの効いた声。
あの演出家だ。
僕は、慌てふためいた。
目には見えないが、
同じ空間にあの演出家が間違いなく居る。
それは、まさに
恐怖以外の何ものでもない。
演出家
「皆さんは薬で眠らされて、この一室に連れてこられました。」
カサハラ
「ヒィィィィィ・・」
フワッと意識が飛んだのは、
まさか薬のせいだったのか・・?
演出家
「目にはアイマスク、そして、
両手には手錠を掛けられた状態で、拘束されています。」
カサハラ
「フ・・フゥゥゥ・・
フ・・フ・・・フ・・フゥゥゥゥ・・」
呼吸が、どんどん乱れてくる。
演出家
「薬のせいで、まだ皆さんの意識は朦朧としていますね。」
心臓の鼓動が
だんだんと高鳴ってゆくのが分かる。
これは、夢なのか現実なのか・・
演出家
「そんな中、一つの大きい物音で、それぞれが目を覚ましてゆきます」
カサハラ
「お、大きい音・・?何だ?!やだ・・怖い、止めてくれ・・」
全身が震えあがる。
大きい物音に僕は身構えた。
演出家
「・・・・・パァン!」
カサハラ
「うふわぁ・・・!!!」
ガシャーン!!!
僕は、恐怖のあまり
パイプ椅子から転げ落ちてしまった。
「ギャー!!!!」
その大音に驚いてか
何人もの叫び声がその空間にこだました。
「キャー!!!」
僕もそれに呼応するように
大声で叫んでしまう。
そんな時・・・
「フフフ・・・」
何者かの笑い声も聞こえてくる。
怖い!!怖い!!怖い!!・・・
僕は、恐る恐る
ゆっくりとアイマスクを外した。
そこは・・
一点の光もない、完全なる暗闇だった。
カサハラ
「な、何も見えない・・・」
ここは、どこなんだ?
ここは本当に、稽古場なのか?
あるいは・・
薬で眠らされているうちに
どこか別の場所に連れてこられたのか・・?
何も見えない。
何もわからない。
まさにそれは、“恐怖”そのもの。
何も見えないからこそ、
今までのこと全てが幻想だったようにも・・
嘘だったようにも思えてしまう。
どこまでが、現実だったのか・・
どこからが、夢の世界なのか・・・
そもそも、僕は存在しているのか・・・?
すべてが曖昧で、僕の思考は
暗闇の奥へと引きずり込まれる。
残るのは、恐怖と無だけだった。