『今日から、君の職業は、正式に”役者”だよ』
そう言われた、あの日から・・・
あの”只者ではない演出家”は、
カサハラ青年にとって”社長”となった。
そう、
ついにカサハラ青年は念願の
”芸能事務所”に所属することが出来たのだ。
その後、
”プロフィール用”の写真を撮影し、
事務所からも色々なオーディションにプロフィールを送ってもらい
”人生初めての撮影”も無事に終了。
そして、
幼馴染の役者”タカモン”からも
素晴らしい刺激を受けたあと・・・
事務所の社長から
”とある話”をもちかけられたのだった・・・
それは・・
週末の演技レッスン後のこと。
僕は社長に
“とある話”がある
と、呼び止められた。
社長
「カサハラ君。君はどう思う?」
それは唐突な質問。
僕は、一瞬息を飲んだ。
カサハラ
「えーっと・・何がでしょうか?」
社長
「君がうちの事務所に入ってから、およそ半年になる。その間に、僕の演出する舞台に3回出て、CMや再現VTRなどの映像の仕事も何本か経験しているよね」
カサハラ
「はい・・社長が演出の舞台では、裏方の仕事なども経験させていただいて、演技以外にも、いろんなことを学ばせてもらってます・・!」
社長
「うん、そうだよね。じゃあ、そろそろ、何か“違和感”みたいなものを、感じていたりしていないかい?」
カサハラ
「え・・?」
違和感・・・
確かに、僕自身も
”なんとなく違和感”というものを
少しずつ感じ始めている気はしていた。
ただ、それは・・
「(“ここ”では、どうしようもないこと・・・)」
と思い、
ぐっと、心に留めておいたままだった。
社長
「どうだい?何も感じていないのかい?」
カサハラ
「いえ・・僕も実は”なんとなく違和感”は感じています・・・ただ、それが、社長のおっしゃる違和感と同じものなのか分からないですが・・」
社長
「言ってごらん」
カサハラ
「えーっと・・・」
僕は、恐る恐る口を開き・・
カサハラ
「それは・・・”リアル演技“だけを追究しても、役者として”通用しない“んじゃないかなと・・感じるようになりました・・・」
僕の回答を聞いて、社長は少し口元を緩めた。
社長
「そう、その通りだよ」