2011年、春。
僕は、フリーターになった。
“勝負のオーディション”で声を掛けてくれた
5社からの誘いをすべて断り、
就職活動もしないまま大学も卒業した
”何も残らない”僕のもとに、
再び現れたのは、
あの元アイドルのNさんだった。
Nさんは1年前の
あの時と同じようにオーディション雑誌を持参し、
「深夜ドラマの主役を募る新人発掘オーディション」
にエントリーしよう!と、強く後押しをしてくれた。
のだが・・
まさかの大失態により、
「深夜ドラマ」のオーディションのエントリーに失敗。
焦りに焦ったカサハラ青年は、
自分の条件にあうオーディションを片っ端から応募することに。
「とりあえず何でもいいから・・」
そんな中
「書類審査おめでとうございます!」
との一通の連絡が・・
それはまだ見ぬ、
「舞台」というフィールドからの招待状であった。
「舞台のオーディション・・・・
そんなの応募してたっけ?」
僕は自宅に帰ると、
机の上にほっぽり出していた
オーディション雑誌をめくり
“書類通過した舞台のオーディション”
の詳細を確認することにした。
のだが・・
「あれ?全然見つからない・・・」
条件にあてはまるものを
片っ端からエントリーしていったので・・
なかなか該当するページを
見つけられない。
「あ、もしかしたらオンラインサイトの方から
応募したやつだったかも・・・」
僕はスマホを開き、
オーディションのエントリー履歴を
確認することにした。
しかし、
また該当するオーディションは見つからず・・・
「え?こんなに見つからないってことある!?」
とは言っても・・
雑誌と、オンラインサイトの2つの媒体からしか
オーディションにはエントリーはしていない。
「うーん・・もう一回、しっかり探してみるか・・」
そう思い、
再度オーディション雑誌を開き、
今度は1ページ1ページ隅々まで探してみたところ・・・
「あった!てか、小さすぎやろ!!」
『募集中のオーディション一覧』
と書かれたページの
ちょうど真ん中らへんにこっそりと
“舞台のオーディション”の
募集要項が記載されていた。
自分の感覚では、
各ページの見出しになっているような
“大きめのオーディション”を
メインに応募していったつもりになっていたので、
まさか、
こんなに“小さくこっそり掲載されている”
オーディションにエントリーしていたとは・・
まったく思ってもいなかったのだ。
「あの時は、それほど必死になって、
条件にあうオーディションに応募していたんだな・・・」
Nさんから勧められた
『深夜ドラマの主役を募る
新人発掘オーディション』
そのエントリー〆切を
“うっかり”逃してしまった時の
すさまじい焦りと言うものが・・
その時の僕を、
“無意識のうち”に突き動かしていたのだ。