そして開始からおよそ2時間・・
Aキャストのゲネプロが無事に終了した。
役者、スタッフはみな、
おのおの手ごたえを感じているようで
その表情には安堵が溢れていた。
ここから約2時間後に
Bキャストのゲネプロが開始となる。
開始30分前までは各自準備の時間にあてられ
自由に過ごしていいことになった。
ということで
早速完全ヤンキーに話しかけてみることにした。
カサハラ
「あのぅ・・・いいですか?」
完全ヤンキー
「お!ケントおつかれさん!なんや?」
完全ヤンキーの表情は
いつもの感じに戻っていた。
それを見て僕も少しホッとした。
カサハラ
「ゲネプロって、お客さんを入れずにお芝居をやるって聞いた気がしたんですが・・・さっきって結構客席に人の姿がありましたよね?」
完全ヤンキー
「あ~、せやな~」
カサハラ
「僕、ステージ上に出た瞬間、それが一瞬で目に入ってしまって、集中が切れてしまったというか・・・みんなのお芝居の邪魔をしてしまったなって思って、なんか申し訳なかったです・・」
完全ヤンキー
「いや、そんなことなかったで~別にケントの役はみんなの邪魔なんかしてへんかったし、自然やったと思うけどな~」
カサハラ
「本当ですか?それなら、まぁ、良かったです・・でも、あの客席にいた人たちって、誰なんですかね?ゲネプロはお客さんが入らないって聞いてましたし、スタッフさんでも、出番のなかったBキャストのみなさんでもないし・・・」
完全ヤンキー
「あ、あれはな~・・・」
演出家
「オーディション組、ちょっといい?」
2人
「え?」
突然のことだった。
僕らオーディション組の控え場所に
あの演出家が訪れた。
オーディション組5人
「ああああ、はい!」
演出家
「着替え終わってからでいいから、ちょっと客席の方に来てくれる?」
5人
「は、はい!」
予期せぬ演出家からの呼び出しに
僕らオーディション組5人は、慌てふためいた。
これは、ただ事ではない。
すぐさまゲネで着ていた衣装から動きやすい服装に着替えて
僕ら5人は駆け足で客席にいる演出家のもとへ向かった。