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“何者でもない”状態


ゲネプロの合間に
芸能事務所に所属するチャンスだよ

そう、演出家に言われてから・・
その言葉が頭の片隅から離れることはなかった。


ゲネプロでは叶わずとも本番期間中に、
もしかしたら芸能関係の人が見に来てくれて


奇跡的に目に留まって、
芸能事務所に所属できるチャンスがあるかもしれない。



そんな淡い期待を抱き続けながらも・・・


全力で舞台に立ち続けた。


お客様に最高の演技を
届けることに必死になった。



その先に、もしかしたら
何かが待っているかもしれないと信じて。




しかし・・


結局そんなのは、夢のまた夢。



誰からも声をかけられる事はなかった。



でも、それは
当然と言えば、当然なのかもしれない。



僕が長い時間を掛けて、悩んで悩んで作り上げた
”神谷椎太郎”というキャラクターも


傍から見れば
セリフのない、アンサンブル(エキストラ)の一人



そんな“端役”に注目する人なんて
いないと考えるのが当然である。



結局、最初から
ノーチャンスだったのだ。



「(やっぱり、この世界で生きていくのは甘いものではないのだな・・・)」



終演を迎えた翌日から
僕はまた“何者でもない”状態に戻ることになった。


すでに学生を卒業しまっている僕は、
ただのフリーター。


また、アルバイト漬けの日々に戻るのだ。



が・・



舞台が終演してから、数日後のこと。



バイト終わりにスマホを見てみると
一通のメールが届いていた。

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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。

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