そのまま、
お芝居は続いてゆき・・
”刑事役(2人)”が登場する直前で、
一度、演出家から「ストップ」の合図が出た。
その瞬間、容疑者役はみな
その場にドサッと倒れ込んだ。
主役の方はもちろん、ストレッチレディも
流石にその場に座り込んで息を整えている。
「まだ、台本もかなり序盤のところだけど・・
みんな体力は持つのであろうか・・」
この舞台は・・
”水曜から日曜”までの5日間、全10公演行われる。
その期間は毎日、
“昼・夜”の2公演ずつの開催。
そして、
この作品はおよそ2時間の上演時間。
つまり
1日2回、計4時間が・・
“5日連続”で行われるのだ。
想像を絶するとは、
正にこのことである。
「次も、今の所まで、もう一度やります」
演出家はそう言いながら、
外へ続く階段を上がっていった。
「そ、そりゃ、そうだよな・・冒頭のシーンも3回やった訳だし・・
今のシーンも一度で終わる訳ないよな・・」
しかし
容疑者役の8人を見ると、
誰も演出家の言葉に驚いてはいない。
きっと、
これまでの稽古期間も、
今日と同じように・・
”繰り返し””繰り返し”
行われてきたのだ。
そして
その8人“以外”の
出演者のみなさんも同じように、
稽古の前半はこうして
じっと”待機”を続けてきたに違いない。
しかし、
稽古中は誰一人として
気を抜くことはなく、
8人の演技をじっと見つめていた。
出演者、そして、演出家も含めた全員が、
この作品に対して、真摯に取り組んでいることを
まじまじと感じることができる。
「僕もこの中に混じって、
2週間後に舞台に立つことになるのか・・」
実感も湧かなければ、想像も出来ない。
しかし、明日からはこの中に混じって
”稽古に参加”となる現実だけが・・・・・
重くプレッシャーとなって
僕に乗りかかってくる。