夜に駆け付ける“ヨナキリウム”に密着 目指すは「母親たちの居場所」!「夜泣きがつらい」母親たちと赤ちゃんが利用も…補助金頼みの現状《新潟》
「夜泣きがつらい」母親たちと赤ちゃんが深夜に駆け付ける夜カフェ“ヨナキリウム”に密着
「夜泣きがつらい」、「育児を一緒に頑張る仲間がほしい」。そんな思いを抱えた母親たちが深夜に駆け込める場所がことし7月、新潟市にオープンしました。
母親の育児の負担を減らすための「夜カフェ」……実際に利用する親子の一晩を取材しました。
夜の水族館をイメージした間接照明が落ち着いた空間を演出します。
時刻は真夜中……
新潟市西蒲区にある母親と赤ちゃんが利用できるカフェ・「ヨナキリウム」です。
飯沼麻帆さんです。
3人の子どもを育てる母親で、この日は生後3か月の末っ子、永都くんと訪れました。
ヨナキリウムがオープンしたのはことしの7月。
子どもの夜泣きに悩まされたという2児の母・滝沢日向子さんとその思いに賛同した斎藤奈月さんの2人が立ち上げました。
<ヨナキリウム・滝沢日向子さん>
「夜、悩めるママさんたちが集える場所があったら理想的すぎて行きたいと思って全国を調べてもなくて、じゃあ私が作ろうと思って」
ヨナキリウムは毎週水曜日の午後10時から翌朝6時まで営業しています。
利用料金は500円。
授乳をする場合もあることなどから、利用できるのは女性と赤ちゃんのみですが、女性スタッフに赤ちゃんを見てもらっている間に休憩したり、育児の相談をしたり。飯沼さんもこれまで2回利用したといいます。
<利用者・飯沼麻帆さん>
「『この子はいつも寝てる子だよね』とか『きょうは珍しいね』とか一緒に子育てしてる感じがすごくするのでもうそれだけでも嬉しい、支えになっていただいてるなって感じてます」
飯沼さんはふだん夫の裕貴さん、5歳の長女・芙優ちゃん、3歳の次女・知愛ちゃん、そして生後3か月長男・永都くんの5人で暮らしています。
夫は病院勤務で朝が早いこともあり、芙優ちゃん、知愛ちゃんの保育園の送り迎えは飯沼さんの担当です。
2人を保育園に送った後は永都くんと2人きりの時間です。
永都くんの子育てでは「夜泣き」の悩みはあまりないといいますが……
長女が生まれた時は夜泣きに悩まされたといいます。
<飯沼麻帆さん>
「夜中に寝なくて目がギンギンのときの顔だと思います。早く早くって思ってました。早く朝が来てとか早くおっきくなってとか、早くこの状態が終わってって思ってましたね」
そんな長女もいまではかわいい弟の面倒をみるお姉さんになりました。
長女が夜泣きをしていた当時、よく長女を連れて夜のドライブに出かけていたという夫の裕貴さん。ヨナキリウムを利用してから妻の変化を感じたといいます。
<夫・裕貴さん>
「ひとりじゃないっていうことを感じてこられたり、精神的に前向きになっているような」
二人三脚で協力する飯沼さん夫婦ですが、それでも幼い子ども3人の育児は体力勝負です。
<飯沼麻帆さん>
「結構がちゃがちゃしてますね、それぞれに遊んでます。せわしない、めちゃくちゃここは時間との戦い」
子どもたちが寝静まった午後10時半……
<飯沼麻帆さん>
「上の子にばれないように、こっそり寝かしつけ終わってから出ていきます。じゃあいってきます」
この日、飯沼さんは永都くんを連れてヨナキリウムに向かいました。
<飯沼麻帆さん>
「これから安心できる場所に行くんだっていう期待と、わくわくと、もうすでに家出た時点から安心してるみたいな」
<ヨナキリウムのスタッフ>
「こんばんは、寒い中ありがとう」
子どもを預けてリラックスしたり、育児の悩みを相談したり…
飯沼さんにとってヨナキリウムはほっと一息つける特別な居場所です。
<飯沼麻帆さん>
「一番は斎藤さんと滝沢さんに会うとほっとするっていうので、一緒に永都を育ててる仲間みたいに勝手に思ってるので」
「夜泣き」がきっかけでスタートしたヨナキリウムですが、いま目指しているのは夜泣きに悩んでいる人に限らない「母親たちの居場所」です。
<ヨナキリウム・滝沢日向子さん>
「特定のこういったママさんにというのは正直ないので、誰かと話したいだったりとか、子ども連れてでも行ける場所でくつろぎたいとか、ただ興味をもっていってみたいなでもいいし」
一方で課題もあります。
<ヨナキリウム・齋藤奈月さん>
「目下の課題はお金の話。コーヒー1杯飲みに来たくらいの感覚で来てほしいけど、例えば私が体調を壊しましたってなったときに、代わってくれる人にはしっかりお支払いしたいなっていう気持ちがすごくある。それがかなうような料金設定ももちろんしていないし、そこの溝をどうやって埋めようかというのはすごく悩みます」
ヨナキリウムの入場料は500円。
3年間は西蒲区の補助金があり営業が成り立っていますが、補助金終了後の継続が課題のひとつです。
滝沢さんと齋藤さんも昼間は働きながら子どもを育てる母親です。
週に1度、夜通し営業のヨナキリウムを続けていくことは決して簡単ではありません。
<ヨナキリウム・齋藤奈月さん>
「困ってるとか、つらいってことがあったらいつでも来てほしい気持ちがあるから、毎週水曜日必ず開けたい」
この日ヨナキリウムを利用した飯沼さんです。
利用者としてこの居場所の大切さを知っているからこそ、時折ボランティアとしても参加しています。
<飯沼さん>
「ママが元気でいてくれさえすれば子どもは嬉しいし育っていくものだと思っているから。何か少しでも楽になってもらえたらいいという思いで来させてもらってます」
飯沼さんはこの日およそ8時間、ひとりではない夜を過ごしました。
ヨナキリウムの利用者として、少しでも子育ての悩みが軽くなる母親が増えればと願っています。
<飯沼さん>
「普段会うママ友ってお互いに外向けの顔っていうか、お化粧もしてたりとか、見られる意識でいたりすると思うんですけど、そうじゃなくて本当にリアルな子育て中の髪振り乱して、頑張ってる同志に会えるみたいな。頑張ってるのは私だけじゃないって感じられる」
育児を一人で抱え込まないでほしい……
ヨナキリウムはそんな母親たちの特別な場所であり続けます。