遂に、役者人生初めての
”稽古”に参加するカサハラ青年。
紆余曲折ありながらも
何とか食らいついていき・・
自身の演じる役である”神谷椎太郎”の
キャラクターをどんどん作り上げていく中・・
本番まであと5日というところで
突然、演出家から
『遺族たちにもセリフを与えよう』
と切り出された。
本来ならば喜ばしい展開のはずだが・・・
お芝居ド素人のカサハラ青年にとっては
とてつもないプレッシャーとなり・・・
結局、
セリフを与えてもらえずに終わってしまった・・
そして、フワフワとした不完全なままの
”神谷椎太郎”というキャラクターを引き下げ
ついに、カサハラ青年は
”小屋入り(劇場入り)”
当日を迎えたのであった。
「(な、なんだこれは・・・)」
僕は自分の掌を見て漠然とした。
僕の掌は、
まさに“真っ白”。
まるで・・
いくら塗り込んでも
肌の色に馴染んでいかない
“強力な日焼け止め”のよう。
「(まさか、僕の顔も、このレベルで真っ白く染め上げられてるのか・・!?)」
恐怖!まさに恐怖!
いや、すぐさま
その恐怖を羞恥心が上回る。
「(は、恥ずかしい~!!!!早く拭きたい!!)」
とは言っても
今はどうしようもない状態だ。
全員がステージ上に集合し
演出家と舞台監督から
これから始まる
“場当たり”の説明の真っただ中だ。
それに加えて
今回の舞台の衣装は
“真っ黒なスーツ”
遺族役と言うことで、
“遺族メンバー”はみな
真っ黒な“喪服姿”を用意。
もちろん、僕も
大学入学時に母親に買ってもらった
AOYAMAの
“真っ黒なリクルートスーツ”を
身にまとっている。
「(この状態じゃ、手を拭くこともできないし、衣装に少しでも触れてしまったら、目立つ汚れになってしまう・・!!!)」
直立不動。
とりあえず
これ以上足掻くことはせず・・
演出家と舞台監督の説明に
しっかりと耳を傾けることにした。
(※舞台監督とは、舞台上で行われる演劇などで、演出家の意向を汲み、その伝えたいイメージを具現化するスタッフの調整、指揮、進行管理をする責任者のこと。場当たりから本番が終わるまで、現場でトラブルがないようにいろいろと配慮してくれる)