カサハラ
「え・・?良くあること、なんですか?」
団長
「うん、役者は誰でも少なからずね、そういう”不安”を抱えているものだと思うのね〜。もちろん、演じている最中は”自分の役に集中している”けれど、演じ終わった後は”これで良かったのかな・・?”って、不安に思ってしまうものだよ〜」
カサハラ
「そっか・・・みんな、同じように、不安を抱えているんですね・・」
スラ男
「私も、そう思いますよ。・・あ、そう言えば、カサハラくんは確か、”表現演技”を学びたいから、うちの劇団のオーディションに参加したって言ってたよね?」
カサハラ
「あ、はい・・」
スラ男
「この半年で、その”表現演技”は習得できましたか?」
カサハラ
「習得・・いえ、それは・・正直わからないです」
スラ男
「なるほど。・・・まぁ、私から言えることは、”固く考え過ぎないこと”ですね」
カサハラ
「固く考え過ぎないこと、ですか?」
スラ男
「うん、カサハラくんは、”リアル演技”と”表現演技”、その2つは”全く別のもの”だと考えているようだけど、私は別に、分けて考える必要はないと思います」
カサハラ
「分けないで・・?」
スラ男
「そう。確かに”リアル演技”と”表現演技”では、アプローチの仕方は違うかもしれないし・・世の中には他にもいろいろな演技法というものも存在します」
カサハラ
「・・はい・・」
スラ男
「でもね、結局は、どんな演技法も”同じゴール”に向かうのだと、私は思っています」
カサハラ
「同じゴール?」
スラ男
「はい。それは、見ている人の”心を動かす”こと」
カサハラ
「”心を動かす”・・・」
スラ男
「まだまだ、カサハラくんの演技には、荒削りさや課題も残ります。でもね・・・カサハラくんの演技は、見ている人の心を動かす力があります」
カサハラ
「え・・・?」
スラ男
「この半年間、私はカサハラくんの主人公を、一番近くで見続けてきました。そして、思いました。”やっぱり私の人選は間違っていなかったな”と。10年以上前から、この作品を全国の小学校で上演してきましたが、この作品の主人公を演じた中で、カサハラくんが・・・
歴代で一番、”心を動かす演技”をしていますから」