遂に、役者人生初めての
”稽古”に参加するカサハラ青年。
振り分けられた配役が”遺族C”という
アンサンブル(エキストラ的な感じ)だったため
「セリフもないし、稽古もそこまで大変じゃないだろう」
などという軽い気持ちでいたのだが、
急遽”容疑者役”の代役として
稽古にガッツリ参加することに・・・
人生初めての舞台稽古で、
メインの容疑者8人の代役という・・・
これまでかつてないほどの
急展開と極限プレッシャーの中ではあったが・・
なんとか、
なんとか、
やり過ごすことができたカサハラ青年。
だが・・
ヒノ君に代わって突如登場した
”ヒノウエさん”からのとある指摘によって
「自分のせいで作品の世界観が破壊されてしまう」
という可能性があると知り
驚愕するのであった・・・
「カサハラさんの演技によっては、
作品の世界観を壊してしまう
可能性があるので注意シテクダサイ」
ヒノウエさんから
投げかけられたその一言に・・・・
僕は身体が固まってしまった。
そして・・
これまでの事が、
僕の頭の中を駆け巡り始める。
もしかしたら・・・
「(僕は、まだ本当の意味で“演技”をしたことがなかったのかもしれない・・・)」
某養成所の
勝負のオーディションの時。
「君に合っていると思う」
そう、長髪のいかにも業界人っぽい
教務主任に言われたことで、
「豚がいた教室」という映画の
主人公の役の演技を参考に練習をしてみたけれども・・
結局、本番では
マーシーの助言のもと
”もっと自分らしく、自然に”
という部分を強調して、
自分自身の演技をするに至った。
この舞台の
オーディションのときもそうだった。
演出家から求められた
「コーヒーを飲む演技」や
「ホラー映画を見る演技」なども・・
結局は自分自身の演技。
さらには・・
オーディション最終日に課題であった
「相手の演技をする」という演技審査も・・
「自分自身で演じた方がナチュラルにできるはず」
と、相手役のヒノ君の性格や癖、特徴というモノを
一切無視して自分自身の演技を行った。
その結果
ヒノ君からは
「全然違う」と否定もされた。
そうなのだ。
これまで僕は、
「自分以外の役」を演じるということを
一度もしたことがなかったのだ。
しかし・・・
それでも、
これまで何とか上手く行っていたのには
一つの理由があった。