「書類審査通過、おめでとうございます!」
それは、まだ見ぬ「舞台」という
フィールドからの招待状。
”不誠実な自信”を持ったまま、
当日オーディション会場に到着したカサハラ青年だったが、
会場で待ち受けていた
”まさかの展開”に慌てふためいてしまう。
「もうダメかもしれない・・」
そう思ったとき、
リュックの中に偶然入っていたのは一つの”トランプ”。
「もしかしたら、これが逆転の一手になるかもしれない・・」
最後のチャンスを賭けた
特技の”トランプマジック”を
オーディションで披露するカサハラ青年。
審査員の鋭い視線をかいくぐり、
なんとか「カサケンのツバメ返し」は成功したのであった・・
演出家
「なるほどね。君、印象いいね。」
僕
「ありがとうございます!」
“只者ではない恐怖感を兼ね備えた”
演出家の鋭い視線を浴びながら
これ以上ない“極限状態”の中で
僕は特技のマジックを
なんとか成功することができた。
「ふぅ・・首の皮一枚つながったか・・」
とは言っても、
一切安心はできない。
これは
「舞台のオーディション」である。
特に演技と関係のない
“トランプマジック”が成功したからといって
それは、ただの付加価値でしかない。
本当に重要なのは
「演技審査」。
「見込みなし」と
判断されれば・・・・
そこで「試合終了」。
そして、その瞬間
僕の”最後のチャンス”も・・
終わってしまうのだ。
僕の後に控えた4人も次々と、
「自己紹介」と「特技披露」をしてゆく。
やはりその4人も
「本物のオーディション」の
場数を踏んでいるというか・・
明らかに溢れ出ている「自信」や、
披露する特技の「表現力・クオリティ」が
僕の“ソレ”とは大きく違う。
「このオーディションが、
芸能界という険しい道を目指した僕の
“最後の苦い思い出”として
記憶に残ってしまいそう・・・」
もはや、
“敗戦ムード”ぷんぷんである。
でも・・
これが本当に最後のチャンス。
もし上手く行かなかったとしても・・
少しでも夢に向かってあがいた日々を
自分なりに頑張ってみた日々を
いつか誇れるように。
悔いなくこのオーディションを
終えられるように・・
きっとこの先、
もう味わうことのできないこの緊張感を
“楽しんでやろう!”
そう心に決めたのである。